当院では膀胱膣瘻の専門治療を行なっております
膀胱膣瘻(ぼうこうちつろう)とは
膀胱膣瘻は様々な原因で膀胱と膣に瘻孔(ろうこう)という交通が生じてしまい、持続的に尿がもれる状態です。持続的な尿もれのために生活の質は著しく損なわれます。発展途上国では出産に伴う膀胱膣瘻が最も多く、日本などの先進国では婦人科手術による医原性の膀胱膣瘻が最も多いとされています。
膀胱膣瘻の治療
膀胱腟瘻の治療は手術で瘻孔を縫合し閉鎖することによって行われますが、それぞれの症例で瘻孔の位置、大きさ、瘻孔部分の組織の性状(血流など)が異なるために、画一的な手術ではなく、症例ごとにどのように瘻孔に至るか、どのように縫合するかなど、術式について事前に十分な検討を行う必要があります。また瘻孔の周囲は炎症や癒着を伴うことが多く、手術には豊富な経験と高い縫合技術が必要です。
膀胱膣瘻の治療は従来、経膣的(膣の入り口から手術する)に行われてきました。しかしながら瘻孔の位置が膣の深部の場合、また膣が狭い場合には膣からの手術は非常に困難となります。また膣からの手術で、膀胱と膣壁の層を適切に同定して、正確に縫合することは必ずしも容易ではありませんでした。治癒率も報告によれば治療施設によってばらつきがあり50-90%と満足の行くものではなく、膀胱膣瘻の手術は難しい手術とされてきました。
一方、近年は欧米を中心に腹腔鏡を用いた膀胱膣瘻の手術が報告されております。腹腔鏡による手術は瘻孔に直接アプローチ可能で、また拡大視野により膀胱と膣壁の層を正確に縫合することが可能です。瘻孔の部位や膣のサイズによっては極めて有効な手術方法であることが示されています。また最近の報告ではロボット手術による膀胱膣瘻の報告もなされ、再発症例などに対する有効性も示されています。当院では、骨盤臓器脱に対する豊富な腹腔鏡手術の経験から、膀胱腟瘻に対しても比較的早い時期に腹腔鏡による手術に取り組み、これまで非常に良好な成績を残してきました。また最近では放射線治療後の難治性膀胱膣瘻の症例に対しても、腹腔鏡下に腹膜フラップを作成し、膀胱と膣の間に介在させることで再発を防ぐ試みを行い、患者を治癒に導き、それを医学論文に発表しました(Hayashi et al. 2021)。
我々亀田総合病院ウロギネチームが目指したものは従来の膣からのアプローチだけでなく、最新の腹腔鏡によるアプローチを適切に選択して、より確実に膀胱膣瘻を治すことです。したがって我々は、瘻孔の位置、瘻孔周囲の膣や膀胱の状態、膣の大きさなどから総合的に判断して、膀胱膣瘻の患者にとってベストな治療方法を選択します。膀胱膣瘻の患者がおられましたら、お気軽にご相談ください。