手術について

当ウロギネセンターの手術

すべての方が手術の適応となるわけではありません。まずは受診をして、医師の診断を受けましょう。

尿もれの手術

手術の適応となるのは、尿道周囲の支持構造が緩むことによって起こる腹圧性尿失禁です。当センターでは、ポリプロピレン素材でできたメッシュ状のテープを尿道の裏側に通して尿道の支持構造を再構築する「TVT手術」と「TOT手術」を行っています。この二つの違いは、テープの端をどこに通しているかで、尿漏れの程度や患者さまの希望・年齢・既往歴・合併症・画像検査などを考慮して術式を判断いたします。

恥骨上あるいは足のつけ根の皮膚に5mmほどの切開が2ヶ所必要ですが、小さな傷であり皮膚を縫う必要はなく抜糸の必要もありません。

  • 術後経過
    翌日より食事・歩行が可能です。術後2日目以降に退院が可能です。
  • 再発について
    非常に少ないと言われますが、約3%に再発が認められます。術後は重いものを持たない、長時間のしゃがみ作業をしないなどの生活習慣に気を付ける必要があります。また、術後も骨盤底筋を鍛えることが大切です。

当センターの尿もれ手術の特徴

  • 進化型TVTキットを用いた尿失禁手術:従来のTVTニードルより細いアドバンテージフィットのニードルを用いることで操作性も高くなり、より安全確実な尿失禁手術が可能です。
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  • 術中超音波を用いた尿失禁手術:術中に尿道長、尿道周囲の状態を超音波で観察し、テープの挿入位置を決めることでより有効かつ確実なTVT手術を行うことができます。
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  • 個々の排尿機能に合わせたテーラーメイド手術:3Dエコーを用いることで尿道スリングの状態が確認できます。また、リニアプローブの利用による液性剥離が同定でき、より安全な尿失禁手術が可能です。
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骨盤臓器脱の手術

骨盤臓器脱の手術は、膣から行う方法と腹腔鏡を使ってお腹から行う手術の2種類があります。

1.膣から行う方法

経腟メッシュ手術(TVM手術)
メッシュを挿入し、臓器をハンモック状に支える手術がTVM手術です。基本的には子宮は残したまま子宮の前側や後ろ側にメッシュを挿入して、メッシュのアームを周囲の靭帯や筋膜に貫通させて固定します。膣壁を切開、剥離してメッシュを入れるだけなので、臓器を切除せず負担が少ないため、入院も短い期間で可能です。腹腔鏡の手術よりも手術より、短時間で済むメリットがあります。
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2.お腹から行う方法

腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC手術)
仙骨腟固定術という、子宮または子宮摘出後の腟断端を吊り上げて仙骨前面の靱帯に固定する手術です。以前は開腹手術が主流でしたが、現在は体の負担が少ない腹腔鏡手術で行われています。子宮筋腫などの疾患ある人や、開脚制限などで腟からの手術ができない人でも対応が可能です。
TVMと比べると手術時間が長くなります。また、性交渉への影響が少ないと言われ、比較的年齢の若い方に行われます。
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当センターの骨盤底臓器脱手術の特徴

経腟メッシュ手術(TVM手術)

・超音波装置を用いた手術
我々は近年超音波を用いて骨盤底領域でいろいろと新たな試みを行っており、特に骨盤臓器脱領域における超音波(エコー)を用いたナビゲーションTVM手術に力を入れております。

エコーを用いたナビゲーションTVMとは:これまでは手探り的な治療でしたが、超音波を使用することでメッシュの位置がミリ単位で調節可能となりました。また膀胱や直腸までの距離もわかるので、超音波を用いたナビゲーション法による安全かつ確実なTVM手術が可能です。下記の、超音波エコー検査機器を用い、診断補助検査や術後経過検査のみならず、術中のナビゲーションに使用しています。

Elevate型TVM:より低侵襲なメッシュ手術。日本では認可されておりませんが欧米ではElevate(エレベート)という経膣メッシュキットが低侵襲な治療として高く評価されております。我々はこのエレベートと同じメッシュの形状を用いて、これまでのTVMの手術を組み合わせることで、エレベート型TVM手術を確立しております。このエレベート型TVM手術は中等度の骨盤臓器脱に対しては低侵襲な治療として有用です。

腹腔鏡下仙骨固定術 (LSC手術)

世界で標準化されているといわれるフランスのA.Wattiezの術式に基づいて腹腔鏡下仙骨前面固定術を確立。北九州総合病院の新井先生とともに、西日本ではもっとも早く腹腔鏡を用いたメッシュ手術を導入しました。

術後経過

翌日より食事・歩行が可能です。術後3日目に尿道カテーテルを抜去し、術後5日目以降に退院が可能です。

メッシュ手術の合併症について

腟の裏に埋め込んだメッシュが、腟から露出してくることがあります。発生頻度は5%以下です。
この場合、露出したメッシュを切除して腟を再縫合することがあります。

術後の尿もれについて

骨盤臓器脱の手術では、術後に尿もれが出現する場合があります。骨盤臓器脱ではもともと膀胱下垂に より尿道が曲がっていることが多く、それが手術で矯正されることで腹圧性尿失禁が出現すると考えられています。多くは時間とともに軽快しますが、軽快しない場合には、尿もれの手術を行うことがあります。予防には術後の骨盤底筋体操をしっかり行うことが大切です。

過活動膀胱の手術

(1)ボツリヌス療法

膀胱の筋肉を緩める薬(A型ボツリヌストキシン)を膀胱壁に直接注射する治療です。過活動膀胱や切迫性尿失禁の患者さんで、通常の薬物療法を行なっても効果が無い、また薬剤の副作用のために治療継続出来ない場合に行われます。米国や欧州など世界で広く行われている治療で、日本では国内の治験を経て2020年4月に健康保険が適応となりました。

詳しくはボトックス療法の特設ページにてご解説いたします。

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(2) 仙骨神経刺激療法(SNM)

電極を埋め込み、会陰部や骨盤を支配する仙骨神経に電気刺激を行う治療です。海外ではこのような治りにくい過活動膀胱に対して以前より仙骨神経刺激療法(SNM)が行われていましたが、日本でも2017年9月から健康保険を利用して治療出来るようになりました。この治療は過活動膀胱だけでなく、便失禁、また排尿困難を伴う低活動膀胱にも有効で、全世界で約25万人の排泄障害の患者さんに治療が行われています。SNMは行動療法や薬物療法といった通常行われる治療を少なくとも12週間継続しても頻尿や、尿失禁が改善しない場合、また副作用などで治療の継続が困難である患者さんが適応となります。

詳しくはSNM手術の特設ページにてご解説いたします。

手術までの流れ

手術の希望がある場合には、外来にて術前検査を行い手術日程の相談をさせていただきます。手術の前日に入院していただき、経過順調であれば、尿もれ手術は術後2日以降、骨盤臓器脱の手術は術後5日以降の退院を予定しています。

術前後に排尿状態のチェックや骨盤底筋体操指導も行います。術後約1か月間は重いものを持ったり、踏ん張ったり、激しい運動などのお腹に強い力を入れることを控えていただく必要があります。

なお、すべての方が手術の適応となるわけではありません。まずは受診をして、医師の診断を受けましょう。

亀田メディカルセンター ウロギネ・女性排尿機能センター

以下、3カ所のクリニックで外来診察が可能です。お悩みの方はお気軽に医師にご相談下さい。※受診予約が必要です。

予約センター

亀田クリニック(千葉鴨川)  TEL:04-7099-1111
亀田京橋クリニック(東京)  TEL:03-3527-9201
亀田MTGクリニック(千葉幕張)TEL:043-296-8175

※クリニックごとに診察日や予約受付時間が若干異なります。詳細は下記の受診案内でご確認下さい。

受診案内

このサイトの監修者
亀田総合病院 ウロギネ・女性排尿機能センター センター長 野村 昌良
【専門分野】ウロギネ(泌尿器科と婦人科の中間にあたる分野:骨盤臓器脱、尿失禁)、排尿障害(間質性膀胱炎、過活動膀胱など)