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過活動膀胱への新しい治療法

1.過活動膀胱とは

過活動膀胱とは、「こらえきれない尿意、またそれに伴い尿が漏れてしまう病気」です。過活動膀胱はよく見られる病気で、高齢者であるほど頻度が高く、高齢化社会の日本では現在1000万人以上の患者数がいると推測されています。
過活動膀胱の治療はまず生活指導(水分の取り方、便秘の改善、減量、今飲んでいるお薬の見直しなど)、行動療法(尿意切迫感を少しだけ我慢する)を行い、その後、飲み薬による治療を行います。しかしこれらの治療でよくならないことがあります。
海外ではこのような治りにくい過活動膀胱に対して以前より仙骨神経刺激療法(SNM)が行われています。日本でも2017年9月から健康保険を利用して治療出来るようになりました。この治療は過活動膀胱だけでなく、便失禁、また排尿困難を伴う低活動膀胱にも有効で、全世界で約25万人の排泄障害の患者さんに治療が行われています。

2.SNMとはどんな治療ですか?

SNMとはSacral NueroModulation: 仙骨神経変調療法のことを指します。会陰部や骨盤を支配する仙骨神経に電気刺激を行い、過活動膀胱の治療をするものです。アメリカでは1997年に治療承認がされ、多くの患者さんに対して治療が行われています。

3.SNMはどんな患者さんが適応になりますか?

SNMは行動療法や薬物療法といった通常行われる治療を少なくとも12週間継続しても頻尿や、尿失禁が改善しない場合、また副作用などで治療の継続が困難である患者さんが適応となります。日本ではまだ保険承認されていませんが、SNMは骨盤痛症候群や尿閉などの様々な下部尿路障害にも効果があると言われています。

4.SNMの治療効果について教えて下さい。

欧米を中心に数々の臨床試験が行われ、その効果が証明されています。147名の過活動膀胱の患者さんにSNMを行う群と薬物療法を行う群それぞれに分けて比較したところ、SNM群で61%、薬物療法群で42%に過活動膀胱の症状改善が観察され、SNM群のほうがその効果は高かった、と報告されました。
SNMは便失禁にも効果があり、日本では2014年から難治性過活動膀胱より先に便失禁に対して保険収載され、治療がすでに行われています。治療効果は機能性便失禁の患者さんが最も高く、過活動膀胱でも尿失禁を伴う患者さんの方が高いようです。反対に神経疾患(脳卒中、糖尿病神経障害、脊髄疾患など)に伴う過活動膀胱は治療成績が落ちる傾向にあります。

5.実際の治療の流れ

治療は段階的に行います。まず神経を刺激するためのリード線を挿入し試験刺激を行い、効果があれば永続刺激のために電池を挿入します。

  • 入院する前に現在の症状についてアンケートによる評価、また排尿記録を行います。リード線挿入に関しての説明を行います。
  • リード線挿入術:麻酔下に臀部の皮膚から電流を流すためのリード線を挿入します。1時間程度の手術です。
  • 試験刺激:病室に戻り体外から電流を流して神経刺激を開始します。不快な症状がない程度に刺激調整を行い、実際に排尿記録やアンケートを用いて治療効果を判定します。
  • 電池植え込み術:ある程度の効果が期待できる方はリード線を電池に接続し、体内に埋め込むための手術を行います。手術は30分程度で局所麻酔で行います。
  • 経過観察:治療効果について外来で経過観察を行います。

6.SNMの合併症はどんなものがありますか?

過去の報告によると感染の発生率は3%、電気刺激による違和感や疼痛が12%、植え込み部分の疼痛が7%だったと報告されています。現在当院で感染の事例はありません。
退院後は激しい運動(格闘技やスライディング動作、ダイビングなど)は機械の損傷に繋がる恐れがあります。車の運転や軽い運動は全く問題ありません。

7.治療後に行えない検査

  • 核磁気共鳴装置(MRI) 植え込んだ電極、また電池の部分に熱を発生して熱傷などの合併症が起こる危険性があります。
  • ジアテルミー(電気透熱療法)

8.最後に

SNMはこれまで治療が難しかった難治性過活動膀胱の新しい治療として期待されています。この治療に対してご相談がある方はお気軽に話しいただければかと思います。

文責:林 篤正(はやし とくまさ)

亀田メディカルセンター ウロギネ・女性排尿機能センター

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このサイトの監修者
亀田総合病院 ウロギネ・女性排尿機能センター センター長 野村 昌良
【専門分野】ウロギネ(泌尿器科と婦人科の中間にあたる分野:骨盤臓器脱、尿失禁)、排尿障害(間質性膀胱炎、過活動膀胱など)