川舩先生が「結核」について勉強会で発表!

当科では毎週木曜日の朝、各医師が持ち回りで注目している領域について、抄読会形式のレクチャーを行っています。
今回は、川舩先生に、「結核」について発表いただきました。

結核について
結核は結核菌による感染症で、主な感染経路は飛沫核による空気感染です。日本の罹患率は2022年に人口10万人対8.2人となり、低蔓延国基準を満たしましたが、2023年の新規登録患者数は依然として1万人を超えており、まだ身近な疾患です。罹患率は減少傾向にある一方で、高齢者や外国出生の若年者に多いことが特徴です。

発症様式
結核菌を吸入しても必ず発症するわけではありません。初感染の約1割が、潜伏期間を経て一次結核症を発症します。また、免疫により一次結核を免れても菌が体内に残存し、免疫力が低下すると再燃して二次結核症を発症することがあります。

症状と診断のポイント
全身症状としては微熱・盗汗・倦怠感・体重減少など、呼吸器症状としては咳嗽・喀痰・血痰・胸痛・呼吸困難などがみられます。一般的な細菌感染と類似するため、2週間以上咳が続く場合には結核を疑う必要があると強調されました。
画像では、一次結核は広範な浸潤影を示すことが多く、空洞化は稀です。二次結核は肺尖部や下葉S6に好発し、空洞形成を伴うことが多いと解説されました。

治療と副作用対策
標準治療は「2HREZ+4HR」で行われ、薬剤感受性が確認されればEZを中止できます。特にピラジナミド(PZA)は肝障害に注意が必要で、60歳以上や女性、栄養不良、ウイルス性肝炎やアルコール摂取のある患者でリスクが高いとされます。副作用があっても安易に中止せず、再開の目安や肝機能障害の管理についても解説がありました。

最近の報告・推奨
米国では薬剤感受性肺結核に対して4か月治療レジメンが条件付きで推奨されており(2HPZM/2HPM)、短期間かつ有効性・安全性の両立が期待されています。また、本邦でのリファンピシン耐性・フルオロキノロン感受性結核に対する治療レジメンについても紹介されました。今後は注射薬に代わる内服治療(BPaLMなど)の普及も期待されます。

まとめ

  • 結核はいまだに身近な疾患である
  • 耐性化の問題があり、適切な診断・治療が重要
  • 特に肝障害を中心とした副作用対策が必須
  • 標準治療に加え、より安全で短期間の新しいレジメンの登場が期待される

フロアからは「診断の手掛かりとして体重減少に注意すること」「非典型的な画像の際に抗酸菌検査を提出する意義」「標準治療を行えないケースの増加」などについて議論があり、最新の診療上の課題も共有されました。

川舩先生は2025年4月より、昭和医科大学医学部内科学講座呼吸器アレルギー内科から研修に来ていただいており、丁寧な診療と的確な連携で、早くも当科の診療を支えてくれています。臨床研究をはじめ、今後も当科として研修をサポートしていきます。

このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患