南房総CTD-ILD講演会を開催いたしました
7月17日(木)、ハイブリッド形式にて「南房総CTD-ILD講演会」を開催いたしました。
当院呼吸器内科部長の伊藤 博之を座長とし、当科 部長代理の舟木 佳弘より「膠原病診療における呼吸器内科医の役割 ~画像、病理、抗線維化薬を中心に~」というテーマで講演いたしました。
講演の中で印象的であったのは下記でした。
<膠原病肺(CTD-ILD)と特発性肺線維症の違い>
- 若年で発症しうるCTD-ILDは、特発性肺線維症と比較してより長期の管理を要し、この管理が予後を左右しうるため、ILDの有病率(合併率)、進行性肺線維症(PPF)に移行する割合、治療戦略を把握しておく必要がある。
- 膠原病におけるILDの有病率は混合性結合組織病で56%、全身性強皮症(SSc)で47%、皮膚筋炎/多発性筋炎(PM/DM)で41%、原発性シェーグレン症候群で17%、関節リウマチ(RA)で11%、全身性エリテマトーデスで6%と様々である。
- この中で、特に管理が重要であるRA、SSc、PM/DMにおいて、ILDがPPFに移行する割合は、26%、31%、24%である。
<膠原病診療の基本と画像所見>
- 手は多くの情報を与えるため、診察の基本となる。
- 画像パターンから疾患を類推することが重要。
- 膠原病に伴う通常型間質性肺炎(CTD-UIP)は、特発性肺線維症(IPF)とは少し異なるパターン(例:細気管支病変を伴うRA-UIP)をとることがある。
- クライオ生検: CTD-ILDに対する意義や必要性については、依然として議論の段階にあるが、炎症細胞浸潤の程度や予後不良であるUIP所見の有無を確認する取り組みが進められている。
- 関節リウマチ(RA): 多彩な像を呈し、UIPパターンの場合は予後不良である。
- 全身性強皮症(SSc): CTD-ILDの中で最もエビデンスが確立されている。抗RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性例では、ステロイドによる腎クリーゼや悪性腫瘍の合併に注意が必要。
- 多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM): 自己抗体が予後を左右する。特に抗MDA5抗体陽性例では、ステロイド、カルシニューリン阻害薬(CNI)、シクロホスファミド間欠静注療法(IVCY)に加え、早期の血漿交換療法を考慮する。
【Take Home Message】
当科 舟木より、Take Home Messageとして以下の点が強調されました。
- 呼吸器内科医の役割: 注意を要する急性期病態(身体所見、画像所見)を見逃さず、間質性肺疾患や呼吸器感染症を的確に評価・治療すること。
- ステロイドの使用: ステロイドの総投与量は可能な限り減らすことを目指す。特にSSc-ILDでは、ステロイド以外の薬剤使用を前提とした治療戦略を立てる。
- 抗線維化薬の使用:
- SSc-ILDに対しては、早期からの抗線維化薬投与を考慮する。
- その他のCTD-ILDに対しては、「現時点では」進行性肺線維症(PPF)に準じたタイミングでの追加投与が望ましい。
会場となったKタワー13階ホライゾン 、ならびにオンラインでご参加いただいた先生方、誠にありがとうございました。
本講演会が、先生方の日々の診療の一助となれば幸いです。
このサイトの監修者
亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓
【専門分野】
呼吸器疾患