大槻先生がDeLLphi-304試験、末梢PDT、第4世代EGFR-TKIに関して勉強会で発表
当科では毎週木曜日の朝、各医師が持ち回りで今注目している領域について、抄読会形式でレクチャーを行っています。
今回は当科部長の大槻先生より、DeLLphi-304試験、末梢PDT、そして第4世代EGFR-TKIに関する話題を提供していただきました。
まず、小細胞肺癌の二次治療に関する国際共同第III相試験「DeLLphi-304試験」について解説がありました。
tarlatamabは、すでに三次治療以降で保険適応となっている、DLL3を標的とし、T細胞のCD3と結合する二重特異性抗体(BiTE)ですが、本試験では二次治療としての有用性を化学療法と比較して検証した結果、PFS(無増悪生存期間)、OS(全生存期間)ともに有意に改善することが示されました。現在、二次治療としての承認が期待されている状況にあり、将来的には一次治療での適応拡大も見込まれますが、先生からは「従来治療との単なる相加効果ではなく、相乗効果を示すような明確なデータが今後さらに求められるのではないか」との見解が示されました。
続いて、中心型早期肺癌に対する光線力学的治療(PDT)は、これまでに国内外で一定のエビデンスが蓄積され、臨床での位置づけも徐々に確立されつつあることが紹介されました。一方で、末梢型肺癌に対するPDTは現時点では保険収載されておらず、標準治療としての確立には至っていませんが、手術や放射線療法が困難な症例、あるいは高齢者や間質性肺炎を合併する患者など、治療選択肢が限られるケースにおいて、末梢型肺癌に対するPDTが新たな治療の選択肢となる可能性に期待を寄せておられました。
最後に、第4世代EGFR-TKIについての話題提供がありました。
第3世代EGFR-TKI(オシメルチニブ)後の進行例では、C797S変異が代表的な耐性機序として知られており、このC797S変異はオシメルチニブが共有結合する部位に直接影響を及ぼすことで、薬剤の結合を阻害し治療抵抗性を引き起こします。現在開発が進められている第4世代EGFR-TKIは、C797S変異を含む多様な耐性変異に対しても、非共有結合型のメカニズムや構造的工夫により阻害活性を発揮するよう設計されており、既に臨床第I/II相試験で奏効が報告されています。また、一部の第4世代TKIは血液脳関門(BBB)通過性も改善されており、脳転移症例に対する効果も期待されています。現時点では治験段階にありますが、近い将来、耐性克服を目指した治療選択肢として重要な位置を占める薬剤群となる可能性が高く、今後の展開が注目されます。
大槻先生は、肺癌診療、呼吸器インターベンションを中心とした臨床・研究活動に加え、教育や呼吸器内科の運営においても、長年にわたり当科を支える屋台骨としてご尽力いただいております。
このサイトの監修者
亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓
【専門分野】
呼吸器疾患