英国コミュニティで合併症リスクが高いCOVID19患者における吸入ブデソニド(PRINCIPLE):オープンラベル無作為化対照アダプティブプラットフォーム試験

LANCETに、合併症リスクが高い外来患者における吸入ブデソニドの有効性に関するRCTが、イギリスから報告されました。

Inhaled budesonide for COVID-19 in people at high risk of complications in the community in the UK (PRINCIPLE): a randomised, controlled, open-label, adaptive platform trial.
Lancet. 2021 Aug 10:S0140-6736(21)01744-X.
doi: 10.1016/S0140-6736(21)01744-X.
PMID: 34388395;

以前 Lancet Respir Med. 2021 Jul;9(7):763-772にて吸入ブデゾニドが軽症COVID19の緊急受診を減らすことが報告されましたが、高リスク患者における有効性は分かっていませんでした。

この研究(PRINCIPLE)は、英国のプライマリケアセンターの中央試験サイトからのリモートで行われた、多施設、非盲検、マルチアーム、ランダム化、制御、アダプティブプラットフォーム試験です。
参加者は、65歳以上または50歳以上で併存症があり、COVID-19の確定診断あるいは臨床診断(suspected COVID19)で、最大14日間体調が悪いが、入院しなかった患者となっています。

参加者は、通常のケア、通常のケアと吸入ブデソニド(800μgを1日2回14日間)、または通常のケアとその他の介入にランダムに割り当てられ、28日間追跡されました。
主要評価項目は、28日以内のCOVID-19に関連する最初の自己申告による回復、および入院または死亡までの時間でした

4700人の参加者が、ブデソニド(n = 1073)、通常のケアのみ(n = 1988)、またはその他の治療(n = 1639)にランダムに割り当てられました。
主解析モデルには、2530人のSARS-CoV-2陽性参加者が含まれ、ブデソニドグループで787人、通常のケアグループで1069人、その他の治療を受けている人で974人が含まれました。

ブデソニド群では、通常のケア群と比較して、最初の自己申告による回復までの時間を推定2.94日(95%ベイズ信頼区間[BCI] 1.19から5.12)短縮しました。 [ブデソニド群 11.8日 [95%BCI 10.0から14.1]対 通常ケア群14.7日[12.3から18.0];ハザード比1.21 [95%BCI 1.08から1.36])、確率優位性が0.999より大きく、事前に指定された優位性の基準値である0.99を満たしました。

入院または死亡については、推定率はブデソニド群で6.8%(95%BCI 4.1から10.2)であったのに対し、通常のケアでは8.8%(5.5から12.7)でした。(推定絶対差2.0%[95%BCI -0.2から4.5];オッズ比0.75 [95%BCI 0.55から1.03])
優位性の確率は0.963 で、事前に指定された優位性の基準値である0.975を下回っていました。

研究者らは、吸入ブデソニドは回復までの時間を改善し、合併症のリスクが高い地域のCOVID-19患者において、入院または死亡を減らす可能性もあると結論しています。

ただし、入院または死亡に関しては、事前に設定された優位性の基準値を満たしておらず、解釈には注意が必要と考えられます。

210823img1.png

このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患