移植患者におけるmRNA-1273ワクチン(モデルナワクチン)の3回目の投与についての無作為化比較試験
担癌患者におけるCOVID19ワクチンの免疫原性の報告が最近増えてきております。
今回、New England Journal of Medicineに、固形臓器移植患者における3回目のmRNA-1273ワクチン(モデルナワクチン)投与の免疫原性に関する無作為化比較試験が、カナダから報告されました。
Randomized Trial of a Third Dose of mRNA-1273 Vaccine in Transplant Recipients
New England Journal of Medicine
August 11, 2021
DOI: 10.1056/NEJMc2111462
研究デザインは、固形臓器移植レシピエント(肺、心臓、腎臓、膵臓、肝臓など)を対象とし、mRNA-1273ワクチン(Moderna)の3回目の投与と、プラセボの投与を比較する二重盲検ランダム化比較試験です。
mRNA-1273を2回投与された移植レシピエントが、mRNA-1273の2回目投与の2か月後にmRNA-1273ワクチンまたは生理食塩水プラセボの3回目の投与を受けるように1:1の比率でランダムに割り当てられました。
プライマリーエンドポイントは、4か月目に100U/mL以上の抗受容体結合ドメイン(RBD)抗体価を呈する血清学的反応とされました。
120人の臓器移植レシピエントを登録され、患者の年齢の中央値は66.6歳であり、移植から3回目の投与までの時間の中央値は3.16年でした。
4か月目に、100 U/mL以上の抗RBD抗体価を、mRNA-1273グループの33/60人の患者(55%)およびプラセボグループの10/57人の患者(18%)に認めました。(相対リスク、3.1; 95%信頼区間[CI]、1.7〜5.8; P <0.001)。
安全性評価では、局所および全身性のイベントは、プラセボの投与後よりもmRNA-1273の3回目の投与後にわずかに多く認めましたが、グレード3または4のイベントはなく、急性拒絶反応の症例は発生しませんでした。
本研究では、移植レシピエントにおけるmRNAワクチンの3回目の投与はプラセボよりも高い免疫原性を示しました。
研究者らは、mRNA-1273を2回接種した移植レシピエントには、規制当局の承認と併せて、ブースターとして3回目のCOVID-19ワクチン接種を検討する必要があると結論しています。
まだ、このような免疫抑制状態にある集団におけるCOVID19ワクチンの有効性に関する研究は限られており、今後も引き続きデータの蓄積が必要と考えられます。
このサイトの監修者
亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓
【専門分野】
呼吸器疾患