デルタ株(B.1.617.2)に対するCOVID19ワクチンの有効性

New England Journal of Medicineに、デルタ株に対するCOVID-19ワクチンの有効性について、イギリスから報告がありました。
デルタ株においてもワクチンは有効ですが、1回接種のみでは有効性が低く、2回接種が必要と考えられます。

Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant
August 12, 2021
N Engl J Med 2021; 385:585-594
DOI: 10.1056/NEJMoa2108891

背景

COVID-19を引き起こすウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のB.1.617.2(デルタ)変異体は、インドでの患者の急増に寄与しており、現在、英国での患者の顕著な増加を含め、世界中で検出されている。この変異体に対するBNT162b2およびChAdOx1nCoV-19ワクチンの有効性は不明であった。

方法

テストネガティブケースコントロールデザインを用いて、デルタ株または優勢株(B.1.1.7、またはアルファ株)によって引き起こされる症候性疾患に対するワクチン接種の有効性を、デルタ株が循環し始めた期間にわたって推定した。シークエンスを使用し、スパイク(S)遺伝子の状態に基づいて変異を特定した。英国におけるCovid-19のすべての症候性シークエンス症例に関するデータを使用し、患者のワクチン接種状況に応じて、いずれかの株の症例の割合を推定した。

結果

ワクチン(BNT162b2またはChAdOx1 nCoV-19)の1回投与後の有効性は、デルタ株(30.7%; 95%CI; 25.2-35.7)は、アルファ株(48.7%; 95%CI、45.5〜51.7)より顕著に低かった:両方のワクチンで結果は類似していた。 BNT162b2ワクチンでは、2回接種の有効性はアルファ株では、93.7%(95%CI、91.6〜95.3)、デルタ株では88.0%(95%CI、85.3〜90.1)であった。 ChAdOx1 nCoV-19ワクチンでは、2回の接種の有効性はアルファ株では74.5%(95%CI、68.4〜79.4)、デルタ株では67.0%(95%CI、61.3〜71.8)であった。

結論

2回のワクチン投与を受けた後、アルファ株と比較してデルタ株では、ワクチン有効性にわずかな違いしか認めなかった。ワクチンの有効性の絶対的な違いは、1回投与でより顕著であった。この結果は、脆弱な集団において、2回の投与で、ワクチンの接種を最大化するための努力を支持すると考えられる。
(この研究は、英国公衆衛生によって資金提供された)

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このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患