2015年10月9日 第2回南房総肺癌個別化治療講演会を開催

亀田総合病院Kタワー13階ホライゾンホールで三沢部長が座長を執り行い「第2回南房総肺癌個別化治療講演会」を開催しました。

講師に加藤晃史先生(神奈川循環器呼吸器病センター呼吸器内科)をお招きし「非小細胞肺癌に対する個別化治療の変遷と今後の展望 〜第3世代TKI 免疫チェックポイント阻害剤を踏まえて〜」の演題名でご講演いただきました。

加藤先生のご講演内容としては、以下の4点につき概説いただきました。

  1. 切除不能悪性胸膜中皮腫患者に対し、標準治療であるペメトレキセドとシスプラチン併用療法にベバシズマブを追加することにより、無増悪生存期間(PFS)は2カ月、全生存期間(OS)は2.75カ月と有意な延長を示したMAPS(IFCT-GFPC-0701)試験(第III相試験)の結果を踏まえ、ベバシズマブ併用は治療戦略になり得ると述べられました。
  2. 進行もしくは再発の肺扁平上皮癌に対してネダプラチンとドセタキセルの併用療法は標準治療の一つであるシスプラチンとドセタキセルの併用療法に比べてOSを延長し、悪心や嘔吐が少ないことを示したWJOG5208L試験(日本人を対象とした第III相試験)の結果を踏まえ、ネダプラチンは有望な薬剤であると述べられました。
  3. 第2世代EGFR-TKIであるアファチニブおよび来年発売予定の第3世代EGFR-TKIであるAZD 9291の臨床試験成績について。特にAZD9291は、T790M耐性遺伝子を持つ患者に対しても奏効を示し有害事象も少ないとされ有望な薬剤として期待されるが、約3%に薬剤性肺障害を発生しており注意が必要と述べられました。
  4. 進行非小細胞肺癌に対する複数の免疫チェックポイント阻害剤について。近々、我が国において進行非小細胞肺癌への適応拡大が予想されるヒト型抗ヒト PD-1(programmed death receptor-1)モノクローナル抗体のニボルマブ、さらに同じ作用機序のペンボリズマブからヒト型抗ヒトCTLA-4モノクローナル抗体のイピリマブまで幅広く臨床試験成績について概説され、これら薬剤が今後は新たな治療戦略になると述べられました。ただし、免疫仲介性の重篤な有害事象には特に注意する必要があり、また医療費が非常に高額であることが課題であることも述べられました。

会場からは「肺癌患者におけるオプシーボ投与においてPseudo progression(免疫療法によって活性化されたリンパ球が腫瘍に集簇し、まるで増悪したかのように腫瘍が大きくなる現象)はなぜ起こらないのか?」と質問があり、「Pseudo progressionは細胞の膨化などで起こると考えられている。肺癌の臨床試験においてPseudo progressionは観察されていないが原因ははっきり分かっていない」とご返答されました。他にも沢山の質問に対して明確にご回答いただきました。次々と新薬が登場する肺癌の薬物治療領域について加藤先生が分かりやすくまとめて頂き、我々一同大変勉強になり有意義な会となりました。


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このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患