第55回 日本呼吸器学会学術講演会 その4 山脇医師の発表

4月17日〜4月19日に開催された第55回 日本呼吸器学会学術講演会にて、亀田総合病院、呼吸器内科より5題発表しました。

本稿では、青島主任部長発案のもと、山脇医師が担当で行った誤嚥性肺炎に関する前向き研究について報告します。


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「誤嚥性肺炎患者において、肺炎球菌の鼻咽頭へのコロナイゼーションが、肺炎発症の起炎菌として関わっているのだろうか?」というクリニカルクエスチョンのもと、「誤嚥性肺炎患者における肺炎球菌の意義に関する研究」を、当科で2014年10月〜2015年3月の期間に行いました。山脇医師が、本研究の結果を報告しました。

山脇は「肺炎球菌の鼻咽頭への保菌率は誤嚥性肺炎患で13%、すべての肺炎患者で8.2%、と先行研究よりも高値であった。また、誤嚥性肺炎患者における肺炎球菌保菌の危険因子は女性、PS≦1であった。誤嚥性肺炎患者の鼻咽頭培養で肺炎球菌が検出された場合、肺炎の起炎菌は全例で肺炎球菌であり、肺炎球菌の保菌が肺炎発症に関与すると考えられた。そして、誤嚥性肺炎患者と誤嚥性でない肺炎患者の両群において、いずれも鼻咽頭培養と起炎菌との高い一致率を認めた。」と結論しました。

会場からは、「この結果を踏まえてこれからも亀田総合病院では入院を要する肺炎患者に対して、鼻咽頭培養を継続していく予定なのか?」と質問があり、山脇は「鼻咽頭培養の検出菌は、起炎菌と一致率が高かったが、鼻咽頭に保菌している肺炎球菌を調べる目的で今回は鼻咽頭培養を施行したため、今の所は、起炎菌検索目的に継続する予定はありません。」と答えました。

また、他の医師より「特に胃切除後の患者さんでEJ junctionがないような場合には、腸管からの細菌が逆流することで誤嚥性肺炎が発症する機序が考えられ、その場合に起炎菌に腸内細菌が関与すると思われるが、本検討ではどうだったか?」と質問もありました。

山脇は「胃切除後などの消化器疾患よる消化管手術のリスクのみ持っている肺炎患者も数例存在し、それらも誤嚥性肺炎と定義した。本検討では、誤嚥性肺炎患者で腸内細菌が起炎菌であった症例は1例もなく、誤嚥性でない肺炎患者の起炎菌において大腸菌を1例認めるのみであった。ただし、本検討では、消化管手術後の誤嚥性肺炎に関しては患者数が少ないため、腸内細菌の関与に関しては結論を導くことは難しい」と返答しました。


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このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患