第31回 うふいち会で、亀田総合病院呼吸器内科 中島医師が発表!

第55回 呼吸器学会総会に合わせて4月18日に開催された、第31回うふいち会で、亀田総合病院 呼吸器内科 中島医師が「突然の呼吸不全を呈した1例」を発表しました。

うふいち会は、沖縄県立中部病院・群星プロジェクトで有名な宮城征四郎先生を中心に、古くから行われている臨床呼吸器カンファレンスです。

他にも、テレビ番組ドクターGを監修されている洛和会 松村理司先生、間質性肺炎のオピニオンリーダーである公立陶生病院 谷口博之先生なども例年参加されております。


うふいち会は、「病歴と身体所見のみから診断に迫って行く」ことを主旨としており、刺激的で勉強になると同時に、発表者は、大御所医師達から厳しい質問攻めに合う過酷なカンファレンスでもあります。

案の状、中島も厳しい質問をたくさん浴び、多くの冷や汗をかきました(笑)。


中島が呈示した症例の概要は、「突然発症の呼吸不全にて近医で挿管され、亀田総合病院に搬送となり、最終的には胸膜原発孤立性線維性腫瘍による中枢気管狭窄・無気肺・肺炎・心不全の診断となり、人工呼吸管理を継続しながら手術を行い救命した1例」でした。

診断にたどり着くまで、病歴と身体所見を主体に約1時間に渡ってディスカッションが繰り広げられましたが、発表者である中島にとって、最も印象に残った場面は、次の「10分間で改善した呼吸困難」という病歴に対する議論でした。


中島が呈示した「来院前日に、10分間の呼吸困難を認めたが、自然軽快した。翌日、日中はいつもと変わらず会社で仕事をしていたが、深夜に入浴後に、再び突然の呼吸困難を認め、救急要請となった。」という病歴に対して、次のような質問や意見が出ました。

「10分間の呼吸困難が生じたときの患者の体位はどうだったのか?例えば、心臓粘液腫などは、体位によって呼吸困難が出たり出なかったりする場合がある。」

「10分間で呼吸困難が改善した病態については、肺塞栓がシャワーのように飛んで一過性に詰まったものが溶解した病態が鑑別に挙がる。しかし、10分間で改善するようなシャワーのような肺塞栓は通常経験しないため否定的と思われる。」(宮城征四郎先生)

「10分間で改善するというのは、気管支喘息発作の経過としても、改善が早すぎる。だから、喘息発作は病歴だけで否定的である。」(谷口博之先生)

「当日まで呼吸困難がなかったとのことだが、最初見たときの患者の人間的印象はどうだったのか?もし、ぼーっとして怠惰な雰囲気の患者であれば、『今まで呼吸困難がなかった』という病歴自体の信頼性が乏しくなる。その場合、本当は緩徐進行性の呼吸困難であった可能性も出てくる。診断学で有名なティアニー先生がよくおっしゃるように最初に患者を見たときの、キャラクター・人間的特徴は、病歴の意味を捉える上で、重要になる。」


今回の発表を通して、刺激的で勉強になったと同時に、あらためて病歴・身体所見という基本も大切にして、呼吸器診療に従事していきたいと思いました。


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このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患