肺炎球菌ワクチンのアップデート2:高齢者に適応拡大されたプレベナー13®(PCV13)の対象は?

肺炎球菌ワクチンに関して、前回の続きになります。

本稿では、高齢者に適応拡大されたPCV13(プレベナー13®)の概要と適応について、書かせて頂きます。

沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13: プレベナー13®)の免疫原性

・13種類の血清型の血清型の莢膜多糖体に担体となるキャリア蛋白(非病原性ジフテリア蛋白:CRM197)を結合させたワクチンである。

・PPV23に含まれる莢膜多糖体はT細胞非依存性抗原であるため、免疫は数年後には減弱し、追加接種による著名なブースター効果は認められない。しかし、PCVはキャリア蛋白に結合させることで、T細胞依存性抗原に変換され、よりaffinityの高い抗体産生能があり、免疫学的記憶の成立によりブースター効果も期待でき、乳幼児にも良好な免疫応答を誘導することができる。
(ワクチンジャーナル 2014;2:16-21)

PCV13: プレベナー13®の小児における有効性

・米国では2000年にPCV7(7価肺炎球菌結合ワクチン)の小児への定期接種が開始されてから7年間で、5歳以下の小児の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD: invasive pneumococcal disease)罹患者数が76%減少し、同時に65歳以上のIPDも減少させ、全年齢において45%減少した。
(J Infect Dis. 2010 Jan 1;201(1):32-41.)

・本邦では、2013年4月からは全額公費負担のもと5歳以下の小児に対してPCV7が定期接種化され、さらに2013年11月よりPCV13の定期接種が開始されている。

PCV13: プレベナー13®の成人における有効性

・PCVの成人に対する有効性は、当初HIV患者を対象とした2つのRCTから得られた. HIV患者に対するPPV23投与はIPDを減らさず、HIV患者を対象にPCV7を4週間空けて2回接種した場合は、IPDを最初の1年は85%減らし、2年後は25%減少させた。
(N Engl J Med. 2010;362(9):812.)
(Lancet. 2000;355(9221):2106.)

・オランダで2008年から2013年にかけて行われたCAPiTA trialでは、65歳以上の85000人の免疫正常な65歳以上の成人を対象にPCV13を接種し、ワクチン血清型において46%のEfficacyを認めたと報告されている。

(Community acquired pneumonia immunization trial in adults (CAPiTA). Abstract no. 0541. Pneumonia 2014; 3:95. https://pneumonia.org.au/public/journals/22/PublicFolder/ABSTRACTBOOKMASTERforwebupdated20-3-14.pdf (Accessed on September 19, 2014).)

・ただし、上記のCAPiTA trialは現時点ではpreliminary paperであり、正式なfull paperが公表されておらず、詳細はまだ明らかにはなっていない。今後full paperになってからの精査を必要とする。

PCV13: プレベナー13®の各国における位置づけ

・CDCの予防接種の実施に関する諮問委員会(ACIP)は、2012年に免疫不全状態にある19歳以上の成人に対して、PCV13とPPV23の両方の接種を推奨した。
(MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2012 Oct 12;61(40):816-9.)

・さらに、ACIPは、2014年に、65歳以上の高齢者に対してPPV23とPCV13、両方のワクチンを接種することを推奨した。

(MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2014 Sep 19;63(37):822-5.)

・この2014年のACIP勧告は、前述のCAPiTA trialを受けたものと思われるが、経緯などは十分に明らかにされておらず、他の先進諸国のなかで高齢者全員にPCV13とPPV23の併用を推奨している国はない。ACIP勧告でも今後4年かけて見直すと明記されている。また日本の厚生労働省も感染症学会もこれに関する声明は出していない。下記に主要先進国における肺炎球菌ワクチン接種の推奨を記す。

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本邦における成人に対するPCV13の適応は?

・主要先進国における成人に対するPCV13の推奨は、まだ免疫不全状態にある者に限定されている。

・本邦でも、免疫不全状態にある患者においては、PCV13とPPV23の両方のワクチンの接種を考慮しても良いと考えられる。ただし、PCV13は、本邦で高齢者においては定期接種の対象ではなく、全て自費であることを理解しておく必要がある。

・PCV13とPPV23の両ワクチン接種法について、ACIPは、PCV13を先に接種した後にPPV23を接種し、65歳未満であれば両者を8週間以上空け、65歳以上では1年以上空けることを推奨している。既にPPV23を接種している者に対しては、1年以上空けてPCV13を接種することを推奨している。
(MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2012;61(40):816.)
(MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2014;63(37):822.)

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このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患