頚動脈狭窄症(鎖骨下動脈狭窄症を含めて)

脳へ血液を送る血管は首の前方に2本、後方に2本の計4本あり、前方の左右にある2本は内頚動脈と呼ばれます。特にこの内頚動脈の起始部には、油汚れや血の塊の沈着(このように沈着した汚れをプラークと言います)が起こりやすいとされます。このプラークが内頚動脈やその近位の総頚動脈の血管内腔に沈着し、血管の内部を細くしてしまうのが頚動脈狭窄症(頸動脈狭窄症)です。この病気は脳梗塞の原因として重要です。
脳梗塞を起こすメカニズムとしては、?プラークが何かの拍子に一部崩れて脳へと飛んでいき脳血管を詰まらせる、?いよいよ血管内腔がか細くなってしまい、脱水や立位によるちょっとした低血圧などでも脳血流が不足してしまう、といったものがあります。ほとんどの場合?です。

この頚動脈狭窄症が発見される契機としては、?脳梗塞や一過性脳虚血発作(24時間以内に症状が回復する場合)の原因検索で発見される、?無症状で脳ドックや健診を受け、偶発的に発見される、といった場合があります。50%(この数字は狭窄度と呼ばれ、数字が大きいほど細くなっていることを意味します)以上細くなっている場合、?のようにすでに症状を出している方だと年間10%以上脳梗塞を再発します。しかし?の場合では年間1-3%の脳梗塞発症率であり、すでに脳梗塞などを起こした(症候性)か起こしていないか(無症候性)は大きな問題です。
症候性か無症候性か、狭窄度はどの程度か、プラークの安定性はどうかといった個々の病変毎に個別の検討を行うことが重要です。

頚動脈狭窄症の原因として高血圧症、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病や、喫煙、過度の飲酒などが指摘されており、治療としてまずはそれらの管理が重要になります。
外科的治療法として昔から歴史があるのは、頚動脈血栓内膜剥離術(carotid endarterectomy: CEA)です。頚部を切開し、露出された頚動脈も切開し血管内の汚れをくり抜いてまた縫い閉じるという治療です。
これとは別に、近年では低侵襲な血管内治療として頚動脈ステント留置術(carotid artery stenting: CAS)が行われています。主に足の付け根からボールペンの芯ぐらいの太さを持つカテーテルを動脈内に挿入し、頸動脈まで誘導します。そのカテーテルの中を通して風船を狭窄部に誘導し病変を拡張した上で、裏打ちするためのステント(特殊な合金でできたメッシュ状の筒: 写真参照)を留置します。これにより頚動脈を内側から広げて治療することができます。傷は足の付け根の刺し傷1つです。平均入院期間も1週間弱です。

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当院で治療を行った患者様の画像を呈示します。
左内頚動脈起始部に高度の狭窄を認めます。太ももの付け根から挿入したカテーテルを介して狭窄部を風船で広げた後に、ステントを留置ししっかりとした拡張を得ています。1週間弱の入院期間で元気に退院されました。

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その他周辺の血管にも同様の治療を行うことがあります。
下に呈示する患者様は、脳梗塞を契機に発見された鎖骨下動脈(首の後ろにある椎骨動脈や腕の血管へ血流を送ります)の狭窄症です。やはりカテーテルを用いて風船で狭窄を拡張した後にステントを留置しています。特に問題なく経過し約1週間で元気に退院されました。

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当科では熟練した脳神経外科医/脳血管内治療医が、方針を総合的に判断した上で皆様に十分ご理解いただけるようじっくりと説明、相談をさせていただきます。
当科受診の際は下記連絡先をご利用ください。

*ステントの写真に関しては日本Stryker社様より使用許可を得ております。

脳血管内治療科 門岡 慶介

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このサイトの監修者

亀田総合病院
脳血管内治療科主任部長 田中 美千裕

【専門分野】
脳卒中の外科治療、脳血管内手術、脳機能解剖学、脳循環代謝学、脳動脈瘤に対する血管内手術、頚動脈ステント術、脳血管奇形、脳動静脈奇形、脊髄血管奇形、顎顔面血管腫