脳動脈瘤

文字通り脳の動脈にできた瘤(こぶ)であり、ほとんどの場合脳動脈瘤があるだけでは無症状です。稀に大きくなってきた脳動脈瘤が脳神経を圧迫して症状(物が2つに見える、まぶたが落ちるなど、圧迫される神経によって変化します)を出すことがあり、これは破裂の前兆として知られています。脳動脈瘤は一般人口の3〜6%の方が持っていると言われており、時に皆様がお聞きになるくも膜下出血とは、この動脈瘤が破裂することによって引き起こされます。これまで経験がないような突然の激しい頭痛が有名です。何の前兆もなく起こる非常に重篤な緊急疾患であり突然死の原因にもなります。また、生存しても大きな後遺症を残すことが多々あります。
くも膜下出血を発症し病院へ運ばれた際は、動脈瘤の再破裂を予防するため、救命のために緊急でカテーテルによるコイル塞栓術(後述)や開頭によるクリッピング術を行うことがあります。

昨今では脳ドックや、頭痛、めまいなどの検査で偶発的に未破裂脳動脈瘤が指摘されることが増えてきました。未破裂脳動脈瘤が発見された場合どうしたらよいのでしょうか。
破裂予防の治療をお受けになるか、それとも定期的に通院して様子をみるか、その判断のためには動脈瘤の破裂しやすさを知ることが重要です。世界的に見ても日本人(とフィンランド人)はくも膜下出血の頻度が高いことが知られていますが、2012年にUCAS Japanという日本人を対象とした未破裂動脈瘤の調査結果が発表されています。この研究によると、調査された未破裂動脈瘤の年間平均破裂率は0.95%でした。動脈瘤は大きいほど破裂しやすく、発生部位によっても破裂しやすさが変わってきます。また形がいびつなものも破裂しやすい(1.64倍)などということもわかりました。その他多くの研究からも、2親等以内の家族歴、高血圧症、喫煙、すでにくも膜下出血を起こしたことがある、複数の瘤があるなどの要因を持つ方など、破裂に関する多くの危険因子が報告されています。

治療に関しては、歴史のある開頭してのクリッピング術(動脈瘤の外から治療する)のみならず、1990年代からは、カテーテル(細い管)を血管の中に挿入して動脈瘤の内側から詰めて治療する、コイル塞栓術が発展してきました(下図:ガラス模型でのコイル塞栓術シミュレーション)。

post2_1.jpg

当科ではこのコイル塞栓術を良好な成績で提供しています。この治療における体表の傷は太ももの付け根の小さな刺し傷のみで、入院期間も1週間弱といった負担の少ないものです。
重要なのはそれぞれの治療の長所や危険性をよく理解した上で、治療と破裂の危険性を秤に掛け方針を決めることです。


参考までに当科でコイル塞栓術を行った方の画像を呈示します。造影剤を血管内に流してレントゲンを撮影しており、血流のある部分が黒く写っています。

post2_2.jpg

post2_3.gif

上段左では画面中央上部に丸々とした動脈瘤が確認されます(約15mm)。直径1mmほどの細いカテーテルを動脈瘤の内部に誘導し、その中からプラチナ製のコイルを詰めていきました。この症例では大事な血管の血流を確保するためにステント(特殊な金属のメッシュでできた筒状の機材:下段の描画を参照)を用いています。上段右が最終像で、瘤内の血流がなくなっていることがわかります。約2時間の手術は無事終了し、後遺症なく約1週間で自宅退院されました。
この症例で使用したステントのように、脳血管内治療の機材や技術の進歩は目覚ましく、一昔前までは適応にならなかったような病気まで治療できるようになってきています。まさに日進月歩の分野です。

当科では熟練した脳神経外科医/脳血管内治療医が、方針を総合的に判断した上で皆様に十分ご理解いただけるようじっくりと説明、相談をさせていただきます。
当科受診の際は下記連絡先をご利用ください。
話をお聞きになるだけでも漠然とした不安から解放されるかもしれません。

※レントゲン以外の画像は日本Stryker株式会社様より使用許可を得ております。

脳血管内治療科 門岡 慶介

脳血管内治療 予約案内

  • 亀田クリニック
    予約センター:0470-99-1111 代表:0470-92-2211
  • 亀田京橋クリニック
    外来予約センター:03-3527-9201 代表:03-3527-9100
  • 亀田総合病院幕張クリニック(2020.6より開始予定)
    代表:043-296-2711
  • 安房地域医療センター
    外来予約係:0470-25-5121 代表:0470-25-5111

このサイトの監修者

亀田総合病院
脳血管内治療科主任部長 田中 美千裕

【専門分野】
脳卒中の外科治療、脳血管内手術、脳機能解剖学、脳循環代謝学、脳動脈瘤に対する血管内手術、頚動脈ステント術、脳血管奇形、脳動静脈奇形、脊髄血管奇形、顎顔面血管腫