抄読会

今月は、パルボウイルスによる腎炎の患者様がおりましたので、当科の専攻医である杉原先生に2007年のcJASNに掲載されたParvovirus B19 and the Kidneyを読んで頂きました。
パルボウイルスは、Parvovirus科,Erythrovirus属でエンベロープを持たない一本鎖DNAウイルスです。
疫学は、小児期の感染が多く、成人の70-85%が既感染で、冬から春にかけての感染が多いです。(今回も同様でした。)エアロゾル吸引で感染、母胎感染があり、血液製剤輸血や臓器移植でも感染することが知られております。
病態は、赤芽球系前駆細胞に感染し増殖、感染後5-10日でウイルス血症が出現し5日間持続、無症状 or インフルエンザ様症状で、Retはゼロに近づき、10-12日でIgM産生、次にIgG産生。抗体産生後、ウイルス血症は急速に改善します。免疫複合体形成することで、症状が出ます。
症状は、伝染性紅斑(通称:りんご病)、関節症、Aplastic crisis:骨髄無形成発作、胎児感染、赤芽球癆などです。
診断は、小児の伝染性紅斑は臨床徴候から診断可能ですが、成人では血清学検査をすることが多いです。急性感染の証明は、IgMの上昇や、急性期から回復期(4-6wks後)にペア血清でIgGが4倍以上に上昇することがあります。しかし、PVB19の血清学的評価は、IgMの偽陽性(例:RF, ANA, EBV-IgM)やIgGの偽陰性、他抗原に対する交差性の問題もあります。(実際当科でもIgM偽陽性で他の疾患であったことがあります。)
腎臓関連の合併症は、糸球体疾患は、基本的にはIgG型の免疫複合体型増殖性腎炎です。その他では、稀ですが、ポドサイトパチー(最近金沢大学からも報告がありました)や、TMAなどの報告があります。
透析に関しては、慢性赤芽球癆でESA抵抗性貧血の報告があります。
移植に関しては、免疫抑制により、透析と同様に慢性赤芽球癆があります。
パルボウイルス感染は稀ではありますが、腎臓内科も認識する必要があります。
非常に勉強になりました。ありがとうございました。

Parvovirus B19 and the Kidney

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このサイトの監修者

亀田総合病院
腎臓高血圧内科部長 鈴木 智

【専門分野】
腎疾患全般、特に腎炎、腎病理