やる気あるの?ないの?
アルコール多飲歴とそれにまつわる神経疾患の既往がある○歳代男性の症例でした。高次脳機能障害と巧緻運動障害、半盲があり、他院神経内科でリハビリを処方されるもドロップアウトしていました。河邊先生が診療開始した時点で確認した本人の困りごとは、巧緻運動障害と半盲で、そのせいで運転できないから就業できないということでした。客観的な評価のために当院でのリハビリを開始したところ、高次脳機能は大幅に改善していることがわかりました。また、本人の人生観や健康観、病い体験を聴取したところ、現状経済的には困っていないものの、今後の人生のことを考えると就労した方が良いと考えていることがわかりました。その後患者さんは一般就労し、適応障がいを起こしながらもアルコールに頼ることはなく、身近な他者に頼ることで上手に乗り越えることができています。
ディスカッションでは病前後の性格面の変化や発達特性について、他者から見た患者さんの姿、患者さんにとっての河邊先生の役割の変化について質問が出ました。医師としての関わり方がわからないときは、一度医師としての役割をおりて本人の話を聞いてみるというのも一つの手で、河邊先生は今回それが自然とできていたのではないかというコメントもでました。Rare diseaseをもつ患者さんに対してのかかりつけ医としての責任の持ち方についても学びがありました。
発表を終えた河邊先生からは、当初は陰性感情がある方でしたが、現在は関わりの変化を感じており、良いパートナーになれていると感じている症例ですとコメントがありました。

このサイトの監修者
亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男
【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学