院長挨拶

私たちの家庭医/総合診療医研修プログラムに興味を持っていただき、ありがとうございます。
当プログラムの強みや、特徴は、すでに、プログラム紹介や、資料、HPなどによくまとめられていますので、そちらを参考にしてください。

皆さんのキャリアチョイスとして、家庭医/総合診療医などのジェネラリストを選んだ時点で皆さんは、良い選択をしたと思います。
それはなぜか、また内科医とは何がどのように違うのか、については別のところで、また、あちこちで説明されていますので、ここでは重複しません。

ここでは、数ある家庭医/総合診療医育成プログラムの中から、どのようにプログラムを選べばよいかについてお話をしたいと思います。

1)すべての人に適したプログラムは存在しない

少人数、こじんまりで大切にされた方が伸びる人と、たくさんのライバルと切磋琢磨して伸びる人、たくさんの症例を経験して、身体で覚えるスタイルの人と、一例一例、じっくりと学んで、理解を深める人と、など学びのスタイルは様々です。そして、すべての人の学習スタイルにフィットする研修を提供できるプログラムはありません。
しかし私たちのプログラムが重視するのは「多様性」です。指導医もスタッフも、もちろん、専攻医のみなさんも個性あふれ、また研修開始までのキャリアパス、考え方、そして、研修終了後の進路もそれぞれです。
皆さんにとって、何が譲れて、何が譲れないのかをよく見つめなおしてみましょう。

2)仲間(サポート)の存在は大切です

たくさんの専攻医が在籍するプログラムが良いという意味ではありません。お互いが「競争相手」として気の抜けない関係の場合もあるからです。毎日の医療を過不足なく、安全に提供するという目的だけで、我々の業界は十分厳しく、プレッシャーも大きいです。ですから、共に働くスタッフ、共に学ぶ同僚、患者さん、そして衣食住に関しての余計なストレスは不要です(研修や診療そのものの大変さからのストレスはゼロに出来ません)。気候も良く、ともに学べる仲間がいる環境は、あまり、他では得られないと思います。

3)診療範囲を狭めることはいつでもできますが、後から広げるのは意外と大変です(また、歳をとるほど、無理が利かなくなります)

当プログラムでは、ジェネラリストの本分である「診療領域の広さ」にこだわっています。プログラム認定基準を書類上満たしたプログラムで、かろうじて専門医を取得するだけなら、それほどの広さがなくても取れてしまったりします。当プログラムで研修をするみなさんはカバーすべき診療領域の広さと深さに圧倒され、けして簡単な研修を行っているわけではありません。しかし、診療範囲を狭めることはいつでもできますが、後から広げるのは意外と大変です(また、歳をとるほど、無理が利かなくなります)。ジェネラリストの中でももっとも分化可能性を秘めたiPS細胞のようなジェネラリストを育てるために、多少無理がきくうちに、自分へ投資をしておきましょう。
その結果等プログラムの修了生は離島〜都市部、少人数〜大人数、診療所〜大病院、大学での教育、研究、海外(南極を含む)、得意分野として、小児や、女性診療、ヘルスプロモーション、震災支援など様々な表現気に分化しています。
初期研修の後、様々なポテンシャルを充電するのは後期研修が最後の機会になるかもしれません。

4)直感を大切にしましょう

情報が過剰な現代、電化製品の機能比較表のように、プログラムごとの分析表を作ったところで、違いはわかっても、どのプログラムを選ぶべきかの答えは出ません。答えはあなた自身の中にしかないからです。そのプログラムの雰囲気、スタッフや仲間との相性などに「ピピッ」と来るかどうかが最後の決め手です。(恋人や趣味を選ぶのに、理詰めで選んだことはあまりないでしょう?)
そのためにはやはり「ここかも?」というプログラムには直接足を運んで、目で見て、肌で感じ、直感を信じることが大切です。

 

もう10年近く前になりますが、家庭医としての米国臨床留学に関して、「もはや日米の家庭医療研修は差異しかなく、優劣は存在しない」と書きました(*)。これは、両国のトップクラスのプログラム、臨床家に関してのことです。ボトムに関しては、未だに大きな優劣が存在するため、平均をとると、米国に軍配が上がるのが実際のところです。
当院での専攻医にも、開始時には、将来的には再度米国へ、と考えているひとが時々いますが、研修の間に、様々な理由で、うちで研修をしたら海外へ行かなくてもよい、と考える人がほとんどです。

プログラムは長くやっていれば良いのではありません。20年間まずいラーメンを作り続けてもなぜか潰れない店もあれば、開店早々、行列のできる店もあります。ですから、「今」のプログラムがどのような研修を提供し、自分がその中でどのようにフィットし、ジェネラリストと幹細胞としてどのように、どれだけ可能性を溜め込むことができるのか?の視点から、プログラムを選んでいただきたいと思います。
そして、当プログラムが、できるだけ多くの皆さんにとっての「最適解」になるよう、我々は毎日、努力を続けつつ、皆さんの応募をお待ちしております。

プログラム責任者 岡田唯男