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「思春期のケア」

キーワード

思春期、不登校

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今回は専攻医3年目・塚原麻希子先生のポートフォリオでした

寝付けない、起きられないこと、学校に時折遅刻してしまうことを主訴に11歳の女児が外来を受診されました。睡眠日誌により概日リズム障害の診断がつき、特殊学級を利用して自分なりのペースで生活することで登校できるようになった矢先に、本人が「学校に行きたくない」と訴えるようになりました。人の多いところに対する苦手意識、他人に対する恐怖などがあいまって最終的に完全不登校にまで発展しました。外来では「3食ごはんを食べる、1日1回太陽を浴びる」などの本人なりの目標を立てるようにし、自宅で日々を過ごしていました。最初は自宅の中に引きこもりがちだったものの、しだいに外出できるようになり、自分自身の目標を持ち、家族と過ごす時間も増えるようになりました。本人が疾患を抱えながらも少しずつ成長し、また家族も自分の子供が学校に通うことだけがゴールではないことを知り、本人、家族ともに成長を感じた症例でした。

Discussionでは、塚原先生がご自身のこれまでの道と患者さんの道を重ね合わせられたところに焦点が当てられました。塚原先生は人生には敷かれたレールと敷かれた分岐があり、時期が来ると選択肢が迫ってきて選ぶというように考えていらっしゃいました。しかし、患者さんの人生を考える上で、高校に進学するだけが選択肢ではなく、将来の選択肢は無限に広がっているという気づきをされていました。その他に、我々の役目としては、患者さんの視野を広げること、さらに家族からもサポート得られるように支援をすることが大切であるという指摘がありました。

岡田先生からは、患者さんにキャリアの話をして、今後働くのか、自給自足なのか、玉の輿なのか、どうやって生きていくかを本人に考えてもらうことがよいのではという提案もありました。自分自身と病気を別物として考えるか、病気も自分の特性として考えるか。そして自分の特性が社会の中で少数派であると分かったときに、自分がこの社会でどう生きていくのがよいかを考えて答えを出すことが思春期のアイデンティティの確立であるとのお話がありました。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学