働かなきゃな

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倫理的に困難な意思決定を伴う事例のケア

キーワード

臨床倫理の4分割表、意思決定支援、パーキンソン病、胃瘻

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パーキンソン病の患者さんの、原病増悪に伴って嚥下機能が低下し、誤嚥性肺炎を繰り返している症例でした。

経口摂取が困難となり、内服によって症状改善も見込めたために経管栄養が始まりましたが、最終的に胃瘻増設を行う選択を本人、ご家族に迫らなければいけない状況でした。意思疎通が難しく、本人からは明確な回答は得られませんでしたが、田代先生や外来主治医であった先生とのディスカッションを重ね、家族と相談しながら意思決定支援を行いました。
その中で、田代先生は「はたらかなきゃな」というご本人の言葉や、内服を拒否していたことを重要視し、この患者さんがどんな思いをもっていたのかを妻に尋ねていきました。そのような過程の中で、臨床倫理の4分割表を用いながら整理し、最終的に胃瘻を増設しています。

ディスカッションでは、

  • 臨床倫理の4分割表を他職種で話し合うことにも使用していけたら
  • 揺れ動く奥さんとどのように関わったのか
  • 外来主治医とはどのように関わったのか
  • 経鼻胃管を入れる前に、どのような前提での話がされていたか
  • 田代先生が患者さんの言葉を拾い、拒薬に思いを馳せて想像していたことがさまざまな職種をも動かしたのではないか

■岩間先生コメント

  • 患者さんの言葉を拾いにいった、それを患者さん家族に聞きにいった。重要な言葉を落ちているのだけれど、そこをどう聞いていくのかが大事
  • 私たちが聞いた「はたらかなきゃ」と、家族が聞いた「はたらかなきゃ」では違ったかもしれない。
  • 「管が繋がれていたら嫌だ」というのがどんな文脈で出てきた言葉だったのだろうか。場面を拾いに行く

■岡田先生コメント

  • 認知症の方は、今残っている認知機能は今がベストと考え、ACPを早い時期に聞くということを心がけていく必要があるのでは。
  • 入院してからどうするか、ではなく、そうなる病気であるということを
  • 医療者の大事な役割として「リスクを引き受ける」ことである。一緒に決めていく、という過程の中で医師がリスクを負い、家族の負担を軽減する。
  • 専門医の先生とのやりとりの中でも、家庭医は通訳の仕事である。

■最後に田代先生コメント
常に誰かに聞きながら、迷いながら、もやもやしていたが、すっきりさせてはいけないような内容かもしれないけれど、次に繋げていくことができそうです。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学