「Lubricant」

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「チーム医療・ケアの調整や移行」

キーワード

チーム医療、Longitudinally


今回は専攻医3年目・山田有統先生のポートフォリオでした。

独居でADL自立の87歳女性が「ものが喉につまること」を主訴に総合診療科外来を受診され、精査の結果、進行の早い球麻痺型の筋萎縮性即索硬化症の診断となりました。神経内科に紹介となったものの、入院中に担当医として関わる場面や、退院後在宅医療に移行して、完全に手が離れる一方で、容態が悪化して再入院した患者さんと再会する場面もあり、初診からわずか7ヶ月で亡くなってしまった患者さんと最期まで向き合い続けた症例でした。

Discussionでは、この症例で先生が果たした役割、また最期まで先生自身がケアをできなかったことに対する不全感に焦点が当てられました。先生の存在があってこそ、多職種をつないでスピード感を持って訪問診療導入を決められたという指摘がありました。一方で、患者さんに最期までケアができなかったことや先生自身の存在意義については、患者さんに対して初療医の責任があることで葛藤もあったが、その責任感が患者さんによい影響を生んでいること、また自身の存在の考察ではなく、自分の行動やその結果に目を向けるのも重要なのではという指摘がありました。

岡田先生からは、自分自身がどういう役割を担えばよいか疑問を持ち、アイデンティティークライシスに陥ったように感じるが、それこそが家庭医の始まりであり、喜ばしいことであるとおっしゃっていました。また、ジェネラリストにとってどこで患者さんを手放すかは大きな問題であるが、決まっていることはなく、その場の状況を判断して、最適を目指すことこそが大切であると強調されていました。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学