心身の叫び

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未分化な健康問題

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MUS(Medically Unexplained Symptoms)不確実性

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家庭医専攻医3年目の濵田先生のポートフォリオ発表でした。

今回の事例は、いわゆる『不定愁訴』でER頻回受診してしまう20代女性です。呼吸困難、胸痛、頭痛などを訴え救急受診され、画像検査、検体検査を行いましたが、特に器質的疾患や緊急疾患は見つかりませんでした。濵田先生はERの限られた時間の中で、可能な限り患者に支持的に傾聴、持参の認知行動療法の本を使って認知行動療法を行いました。患者は受診して検査すると安心するが、家に帰ると何かしら症状が出てきて自分が病気ではないかと不安になってER受診しまうということでした。今後の頻回の救急受診を防ぐためにも、家庭医の継続的な外来フォローと精神科の介入を提案されました。その後は何回か救急受診をされましたが、先生の定期外来に受診され、少しずつですが症状は安定してきているとのことでした。
本症例は解剖学的に部位が一致しない、寛解増悪因子が合わない、症状がある場所が移動するなどからMUSに該当します。しかし、MUSを疑ったとしても、常に器質的疾患の可能性は考慮に入れなければなりません。社会的・心理的側面に関してMUSは介入できるので、それに関しては家庭医の得意分野なのではないかという指摘がありました。
ディスカッションでは、かかりつけ医の重要性や『かきかえ』を使った患者の解釈モデルの探索について、など様々な意見が出ました。
岡田先生からは、以下のようなお話がありました。
MUSと安易に決めつけず、不確実性に耐えながら定期的なフォローを行うことで、自分の診療技術の向上や患者の症状の進行などで思わぬ形で診断に至る場合がある。また、CBTの中で語られる"perception is reality"の言葉があるように、患者の知覚はその人にとって真実で、それを医療者は否定できない。ドクターショッピングする患者の中には適切な診断なしに適切な医療はないと思い込んでいる人がいる。ただし、『よくなりたい』という気持ちは変わらないので、その部分は医療者と共通の理解基盤を作れる。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学