リハコラボ×亀田家庭医 鵜飼万実子

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post284_0.jpgー鵜飼先生のおっしゃる「リハコラボ」について教えてください。
「リハコラボ」は私が日本プライマリ・ケア連合学会において、プライマリケア医(家庭医・総合診療医)とリハビリテーション科医(以下 リハ医)とのコラボレーション企画を立ち上げたときに生まれた造語です。
リハビリテーション(以下 リハ)を理解するプライマリケア医が増え、プライマリケアを理解するリハ医が増え、互いを理解しあって協力し合えば、この日本、この世界はもっと幸せになる!という確信に近い野望を持っております(笑) 

ーリハコラボに興味を持ったきっかけは何だったんでしょうか?
私が医学生の時、偶然にも両親の務める回復期リハ病院に家庭医の先生が赴任されました。両親の計らいで家庭医外来を見学させてもらいました。家庭医の先生は、年齢問わず内科疾患だけでなく整形疾患も診察していましたし、地域で過ごす人々の生活の様子をよく理解されて診療に当たっていたのが印象的でした。
同時期に亀田総合病院リハ科の宮越部長の外来も見学したのですが、小児の成育発達歴や生活の様子も確認されながら患者の動作についてどうアプローチするか考えていらっしゃいましたし、内科的な相談にも乗っていました。
当時は家庭医のこともリハ医のこともよくわかってなかったのですが、二つはほぼ同じだと思ったんです。家庭医は社会で生きる人々を支えるために関係性や文脈も含めて支えます。リハ医は活動や生活、社会でどう過ごしていくかを考えてアプローチします。各論の知識は違うのかもしれないけど、根幹は同じではないかと思っています。
日本は高齢者が多くなっているだけでなく、医学的にケアが必要な小児も増えています。発達障害と言われる方達のケアも考えなくてはいけません。
人々が社会で生きるために、人生や生活も含めて考えた診療をする家庭医やリハ医の存在は必要だと思います。ただ、どちらも日本ではまだ少ないんですよね。

きっかけは家庭医との出会い

post284_1.jpgーリハコラボについて今後の野望はありますか?
これまでプライマリケアの医療関係者やプライマリケア志望の学生向けに、ICFの考え方、リハにまつわる職種(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師)のハンズオン、嚥下障害、補装具といったコンテンツをレクチャーしていきました。試行錯誤をしていますが、今後もプライマリケア医とリハ医が繋げる活動ができたらと思います。
プライマリケアの医師がリハについて知らないこと、リハ医がプライマリケアのことを知らないのは、とってももったいない!お互いを理解しあえば、もっと日本や世界の人々が元気になる繋がりができると思っています。

ー家庭医療が他の科や他の業界の方から面白いと思われるのはどうすればいいんでしょうか?
学生時代から家庭医療などの勉強会に参加してきました。これまで家庭医療の学生・医師は勉強会などの機会を通してコミュニティを形成して、お互いの絆を深めていきました。そのコミュニティがあるからこそ、いま家庭医療・総合診療を志望する学生や専攻医が増えていると思います。今後はこのコミュニティがさらに進化して欲しいと思っています。
学生や初期研修医が家庭医療を志望していたんだけど、臓器別の専門科に魅力を感じて志望を変える方がいます。私はそういった方々の背中は押したいと思っています。彼ら彼女らにはぜひ家庭医療の理解者になっていただき、科を跨いだ繋がりを築けたらと思っています。

リハとプライマリケアの架け橋

ーそんな鵜飼先生が亀田家庭医を選んだきっかけは何ですか?
私は関東の中で家庭医療とリハを共に学べる場所を探し、亀田を志望しました。亀田の研修はどの科で勉強しても、学んだことや取り組んだことについてフィードバックが様々な形でかかるとても良いところです。
地域ジェネラリストプログラムで初期研修を始めたので、医師1年目から家庭医外来をしています。リハ科で後期研修をしていた時期がありましたが、この時にライフイベントを含めてたくさん考える機会があり、多くの臨床経験を積んだり刺激し合う同期と学びたいと思い、転科しました。家庭医の後期研修・フェローを終えたのち、もう一度リハ科の後期研修をして、いまは家庭医のリサーチフェローをしています。

post284_2.jpgー家庭医と迷っていた科はあったんですか?
整形外科!!実は初期研修時代・リハ科後期研修時代含めて7ヶ月ローテしてます。整形になぜ進まなかったの?といろんな方に言われました(笑)指導していただいた整形外科・スポーツ医学科には心から感謝しています。
手術室の凛とした空気、術者の洗練された手技、レントゲン写真におさまる整復された骨の像、治療で傷が治っていく様子、全てがかっこよかった。手術の翌日に患者さんが歩行訓練を始められるなんて、すごい!と思ってました。ただ悲しいかな自分は手術には不向きだったんですよね...。なので、整形外科の先生方を支える役回りになろうと決めました。

ーでは、もし学生などから家庭医にもリハにも興味があるんです。進路をどうしたらいいでしょう、と問われたらどう答えますか?
どちらでもいいと思います。亀田のリハ科にいる私の後輩も家庭医の外来をしていますし、どちらも勉強したいと思うのであれば、亀田グループでの研修をお勧めします。

ー亀田家庭医をやってよかったかなと思う瞬間はありますか?
家庭医研修を始めた直後に、岡田唯男先生から執筆のお誘いをいただきました(「その患者さん、リハ必要ですよ!!〜病棟で、外来で、今すぐ役立つ! 評価・オーダー・運動療法、実践リハビリテーションのコツ」羊土社)。岡田先生が私のことを理解してくれて声をかけてくれたのです。当時医師4年目だったのですが、背伸びをして文章を書いた経験はとても刺激になりました。文献を調べたり、自分の言葉を一生懸命編むことで、他者への情報発信について考えるきっかけになりました。
私がいまリサーチフェローに進んだのはこの経験から来ています。自分の発信能力を磨きたいと思ったのが、動機です。

ー専攻医としての生活はどうでしたか?
亀田にやってくる全国の優秀な研修医との研修は、気後れしそうでした。しかし、先輩・同期・後輩がいること、そしてフィードバックがかかる環境の中で身を置くことで、自分が理解している点と不勉強な点がわかるので、自分の成長が見えるんですよね。なので、研修はとてもたのしく、充実していました。

ー今、鵜飼先生は亀田ファミリークリニック館山でリサーチフェローをしていらっしゃいますが、リサーチフェローはどのようなことをしているのですか?
個別のニーズに合わせた研修をするコンセプトになっています。
私の場合、研究経験がほとんどないため、まずは疫学などの書籍を読み解いています。最近は書籍や動画を含めて教材が非常に豊富なのですが、独学だと理解が大変なので、不明点は先輩の高橋亮太先生や岡田先生に聞いています。
また、Protected timeという時間をもらっており、研究に割く時間が確保されています。
さらに、リサーチミーティングではプライマリケア研究の抄読会をしています。積極的な発言を求められるため、なかなか歯応えがあるのですが、対話を重ねていくうちに理解が深まっていくので面白いですよ。家庭と両立しながら学べています。

ーあなたにとって亀田家庭医とは?
亀田家庭医は、家庭医を育てる伝統校でありながらも、特有の型にはまってはいません。各々の個性を認め個性を伸ばしてくれる場所です。また、活きがいい医師が多いのでイノベーションを起こせる力もあり、過ごしていて面白い環境です。

個性を伸ばし、イノベーションを起こしていく亀田家庭医

ー最後に、未来の亀田家庭医にメッセージをお願いします
亀田での研修に関して不安に思ったことはありません。ただ、刺激的な研修の場なのでびっくりするかもしれません。意志を持っている人もいるし、切磋琢磨をする人も多いですし。ただ、このような場に身を置くと、どんな人でも成長できます。私自体は劣等生でしたが、亀田の研修で伸ばしてもらえたと思っています。自信がなかったり「亀田の研修医って頭がよくなきゃいけないんじゃないの?」と思ったとしても、大丈夫。伸びます。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学