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家族志向のケア

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家族志向のケア、コミュニケーション・パターン

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家庭医療専攻医3年目の高島先生のポートフォリオ発表会でした。

今回の事例は、じっとしていられないとの主訴で来院し、リハビリテーションを処方した女児の事例でした。その家族を観察していくと複雑な事情が浮き彫りとなり、どこから介入していけば悩まれたとのことでしたが、「コミュニケーション・パターン」を用いてループ図を考え、悪循環になっている両親の関係性にアプローチしていくことができたとのことでした。「コミュニケーション・パターン」とは家族療法を考える上で大事である考え方で、問題を解決しようとして行った行動が解決する方法へ行かず、かえって悪循環になっているというパターンです。その中で、ひとつの出来事において関係者それぞれが異なる見解を主張し矛盾してしまう「羅生門効果」に注意し、ニュートラルな立場で両親の話を聞き、新しい物語を作るのが家族療法とお話されていました。

ディスカッションでは、コミュニケーション・パターンを用いて得られたループ図のリフレーミング方法について、家族ライフサイクルの不全点について、複雑困難事例としてのクネビンのフレームワークについて考えを深めました。また、両親がそれぞれ辛い家族関係を過ごしてきたとのことで、それぞれが考える良い家庭を確認すると良いのではないかというアドバイスがありました。岡田先生からは、よいアセスメント・対応だったと話があり、更に考察を重厚にしていくために、家族ライフサイクルで慢性疾患・メンタルヘルス疾患を抱えた家族という面での考察を入れ込むことを提案いただきました。さらに、今回は子供の受診でしたが、両親へのアプローチ(育った家族の再構成やグリーフワーク)も良いかもしれないとのアドバイスがありました。

どうしても目の前の患者に焦点を当てがちですが、その後ろに存在するfamily treeに解決の糸口があること、そして複雑困難に見えそうな事例でも適切なアプローチ法を用いることで視野が開けることを学びました。コミュニケーション、家族志向ケアに造詣が深い高島先生の洗練されたポートフォリオでした。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学