COVID-19流行による患者の受療行動の変化を知りたい

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研究

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FINERの基準、混合研究、COVID-19


5月28日に専攻医4年目の渡部先生のポートフォリオの発表がありました。
今回のポートフォリオのテーマは研究です。

COVID-19の流行に伴って「患者さんの受療行動は変化していそう」との感覚はクリニックで勤務している私達の実感としてありますが、それを研究できないか検討した発表してくださいました。渡部先生によれば、本邦においては、COVID-19流行時の患者数についてのアンケートはあっても、先行研究はありません。パンデミックで言えば新型インフルエンザ(H1N1)が記憶に新しく、それに関連する研究の外挿を検討されていました。H1N1の際の研究では、小児科診療所における受診者数に影響を与えた要因として、1.感染を心配して受診、2.H1N1の院内感染を恐れた受診控え、3.円学校一斉休業に伴う市内感染症の減少、4.家庭や諸施設での手洗いなどの予防策に伴う市中感染症の減少、5.季節・時期的な疾病の自然変動、について検討された文献があるようです。これを参考に当院の冬シーズンに受診し患者数と受診理由に該当する疾患が前年同時期と比較して優位に減少したか、変化したかを記述疫学による量的研究デザインを提示してくださいました。"FINERの基準"で研究について考察もされていました。

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【Discussion】
COVID−19によって受診者が減っていること、受診理由が大きく変化していることは実感していることで非常に興味深いとの意見が多数でました。研究デザインにおいては多数の意見が挙がりました。
例えば、受診に至るまでは様々なバイアスが、先行研究で指摘されている以上にあることが予想され、特定の疾患に絞って検討する方が有用である可能性。当院の受診種別の多様性(定期受診・OPEN受診・リハビリ受診)は他のクリニックと比較すると特殊であり、他のクリニックや病院に外挿できない可能性があること。研究の特性から、"受診しなかった"患者さんの不受診理由を聞くのが困難であること。受信者「数」が有意に減ったことの重要性を示す量的な問題よりも、「なぜ」受診しなかった/受診したのかといった質的研究に臨床医の興味や他地域への応用ができるではないかという意見が出て、量的・質的研究を兼ね備えた混合研究の方式での研究も提案されました。

ポートフォリオにおける研究は専攻医にとって難しいテーマですが、臨床医にとって研究がなぜ求められているかを考えながら研究に、日々の臨床に向かっていくことでだんだんと紐解かれていくのではないかと改めて考えるポートフォリオ発表会でした。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学