長期的な全人的関係(Longitudinality)に基づくケア

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長期的な全人的関係(Longitudinality)に基づくケア

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Starfieldの4+3、Longitudinalityとcontinuity

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本日は専攻医2年目の西先生の発表でタイトルは「600日とこれから」。自由気ままに過ごす方に対してどう全人的に介入していくか考えさせられる発表でした。

70代男性、独居で年金生活者ですが、普段は山の中の家で電気・ガス・水道・トイレのない環境で気ままに過ごしているという一風変わった方です。そんな方が交通事故をきっかけで入院し、退院後のフォロー でKFCTに紹介となり担当医になったところが出会いでした。外来の中で途中、通院が途絶えることもありましたが、根気よく関わり続け、地域包括支援センターと協力して各種サービスを導入しました。その後、再度入院した時に追加で介入を試みました。ご本人の希望はいまの生活スタイルのまま『気ままに生きたい』。それに対して介入を続けていくことがどこまで正しいのか西先生の中ではモヤモヤしていたようです。結果的には現在はデイサービスにも楽しんで行けており、関係性は良好なので、うまく介入できて良かったなとの思いに至っています。一方で、自身と患者の関係を振り返ると、患者の主体性に欠ける部分があり、患者の主体性が重要な要素であるLongitudinalityが成立していないのではないかとも考えています。

discussion
最初は自分が何をすべきかわからないと感じていたそうです。患者さんが困っていない時の介入は正しいのかという感情があったそうですが、問題解決思考ではなくて、関係構築にfocusするのはどうかと言われたことで考えが変わったようです。お節介とアドボカシーの線引きの難しさ、意思決定能力の評価、社会リソースの使い方などに関して様々な意見が出ました。Starfieldの4+3から全人的な介入とは、LongitudinalityとContinuityの違いから継続的な関わりについての議論となりました。

岩間先生:受診拒否がない理由が気になる。話をもっと聞いてみたい患者さんですね。健康感につながるワードが会話の端々にあるのではないか。それをうまく提供できたら良いのではないか。孤独と孤立の違い。
先生が台風の時にこの患者さんの顔が浮かんだのは何故なのか。生き様を聞いてみるのは良い関わりかたかも。

岡田先生:意思決定能力があるのかどうか。インテリジェンスのある中で考えてこの生活を行っているのであればお節介だが、意思決定能力が乏しいのであればアドボカシーになるかもしれない。心理的主体性があれば行動に出ていなくても主体性を持っていると思っていいのではないか。定期的にみていることと継続的にみていることは必ずしも一致しない。

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学