こんがらがった問題

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BPSモデル

キーワード

BPSモデル、複雑困難事例、クネビンのフレームワーク

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専攻医3年目、今年度末にポートフォリオの提出を控える河田先生のポートフォリオ発表会でした。今回は、中学生男児の事例について、原疾患、社会生活の変化、学校生活の問題が絡み合った複雑な状況を、BPSモデルを用いて整理し、今後の方針についてディスカッションを行いました。
全体ディスカッションでは、河田先生の「見えていない要素」として本人や家族の意向やillness experienceが挙げられました。また思春期の患者の特徴として、内面を言語化する力が未発達である可能性も指摘されました。
岡田院長からは、複雑困難事例を理解する枠組みとしてクネビンのフレームワークCynefin frameworkの紹介と、分類のための情報収拾の必要性の解説がありました。複雑困難事例(complexあるいはchaotic case)において、事例が現在進行形では答えはわからないものであり、「最も悪い方向に行く可能性の低いもので、取り組みやすい選択肢」から1つずつ試していくこと、その介入に対してシステムがどう動くかを見て次の手を考えることが必要なことを指摘されました(probe-sense-respond)。また、通常の課題解決志向から、関係構築志向への変換や、時間をうまく使うことも、このような複雑困難事例では有用な介入となりうることを教えていただきました。

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By Snowden - File:Cynefin framework Feb 2011.jpeg, CC BY 3.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=53504988 より転載

家庭医は複雑困難な事例にぶち当たることが多くあります。岡田先生はそれを解決していくことに楽しみを見出すようになれるように、とお話されていました。その境地に至るまでは(少なくとも私は)まだまだ遠そうですが、一本ずつ糸をほぐしていくように、焦らずに目の前の患者や、患者を取り巻くすべてに寄り添って行ければいいなぁと感じたポートフォリオ発表会でした。

文責:渡部

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学