レジデントデイ2018 第2回 #2ポートフォリオ

ポートフォリオ COPC:Community oriented primary care

今回のポートフォリオは、専攻医3年目のCommunity medicineの研修の枠で行ったCOPCについてでした。今年の2人が現在までの経過を発表しました。

総論では、COPCのステップ、SDH : Social Determinants of Health(健康の社会的決定要因) の話、各論では「遺族ケア」「LGBT(Lesbian Gay Bisexual Transgender : 性的少数者を広く指す意味の言葉)のケア」について、その特性、この地域における現状、医療がどう関わるか、今後のビジョンを発表しました。

遺族ケアについては、2018年4月から当院でも遺族ケア外来を立ち上げ、大切な人を亡くされた方をサポートするよう取り組んでいます。死別の悲嘆はそれぞれですが、中でも生活への影響がでるなどの強い悲嘆、また長引く悲嘆は「複雑性悲嘆」と呼ばれ、特別なサポートが必要です。この地域の宗教職や葬儀社など死別に関わる専門職へのインタビューを通じて、この地域の遺族に関わる現状を紹介し、今後どのように私達が遺族というコミュニティに関われるか、地域の多職種との勉強会やとりくみのビジョンを伝えてくれました。

LGBTは昨今メディアでも取り上げられていますが、全人口の7%ほどと言われ、実はAB型や左利きの方と同じくらい身近な存在であること、彼ら特有の健康問題(性感染症やメンタルヘルスの問題)を抱えやすいこと、その一方で、まだ社会の偏見や差別があり、彼らの医療アクセスが制限される(受診そのものが少ない、受診しても打ち明けられない)などの問題があります。家庭医がこの現状を改善する可能性があり、アメリカの家庭医療学会のガイドラインを紹介してくれました。COPCとしては、中学校で行う性教育でLGBTおよび性の多様性を取り上げ、LGBTが学童期・思春期に抱えやすい不登校やいじめの問題の改善を検討したり、また市役所へのアプローチで相談窓口や住みやすい街への取り組みをサポートしたり、という活動の経過を発表してくれました。

年3回あるレジデントデイ、ここでの仲間とのDeep learningがじわりじわりと、私達の毎日の臨床に活かされ、患者さん家族、地域へ、そして自分たちの学び、働き方、生き方への姿勢につながっていると感じています。
何より、ともに学ぶ仲間がいること、こういった時間を与えられていることを心から感謝しています。これもさまざまな理解があるからこそで、場所の提供や診療面で調整もあり、医師以外の全体のスタッフのおかげだと思います。
ここでの学びをまた日々の診療に活かし、家庭医として深めていけたらと思っております。次回、今年の第3回レジデイは11月に予定されています。

文責:久保田

post161.jpg

このサイトの監修者

亀田ファミリークリニック館山
院長 岡田 唯男

【専門分野】
家庭医療学、公衆衛生学、指導医養成、マタニティケア、慢性疾患、健康増進、プライマリケア・スポーツ医学