ポートフォリオ勉強会「在宅での新型コロナワクチン接種」

エントリー:B5-② 在宅医療の質改善

フェローの甲斐医師による、先日行われたポートフォリオ勉強会の学びと感想をシェアします♪
ポートフォリオ勉強会の雰囲気や訪問ワクチン接種の取り組みの悩みを感じてただければと思います。


ポートフォリオ勉強会について
ポートフォリオ基盤型学習は専門医取得の研修要件の一つです。「今この経験は、在宅医となるために必要なも知識・技術・考え方の全体のうちの、この領域のこの部分を学んでいる」ということを意識して診療することが求められます。日々の学びを蓄積した記録である「学習ポートフォリオ」をもとに、評価用の「ショーケースポートフォリオ」を作成していきます。
亀田在宅では定期的にポートフォリオ勉強会を開催していて、来年から再来年にかけて専門医取得を目指す面々が持ち回りで自身のショーケースポートフォリオ(の卵)を発表しています。
今年から亀田在宅に来た私は「ポートフォリオ」という単語ですらあまり聞いたことがなかったのですが、日々の診療の中で感じた「モヤモヤ」をもとにエントリー項目を決めていくこともあるようです。
実際に診療してみると、4月からのたった半年間でも、まさに「モヤモヤ」としか言い得ないような迷いがたくさんあります。患者さんとの距離が近く普段の生活の場に入り込んでいる在宅医だからこそ、画一的な疾患の治療だけでなく患者さんそれぞれに合ったやり方でより良い生活をサポートできたらいいな...。
こういうときに、自分の迷いをベースにしたポートフォリオ学習での振り返りはとても有意義だなぁと思っています。
今回は「モヤモヤ」ではなく、「在宅医療の質改善」項目として新型コロナワクチン接種について考えてみました。


テーマ「在宅での新型コロナワクチン接種」について
訪問診療で伺っている患者さんの中には集団接種に行けない人が多くいます。そんな患者さん達にワクチン接種を行うため、亀田在宅でも「ワクチン隊」を結成しました。
可能な曜日は集団接種と同じ日曜、準備したワクチンは保冷かつ揺らさずに搬送、タイムリミットは希釈後6時間!!
訪問看護師さんなどとも一緒に綿密な接種スケジュールを作成。
ここで意外だったのが、一番の障壁になるのは「問診表の準備」なのでは?とのこと。
過去のインフルエンザワクチンの訪問接種の時には、患者さんのお宅に到着したらまずは問診表の入った封筒を一緒に探すところから始める...なんてこともあったよう!(外来でのワクチン接種しか経験のない私にはとても思いつきませんでした)
通常のワクチン接種ならそれでもいいのですが、今回は「1隊が6時間で1バイアル6人分を投与する」というミッションがあります。患者さん宅の移動時間も考えると、一人の患者さんのお宅にかけられる時間は最長40分です。経過観察の時間も必要なので、予め問診票を準備しておくことは必須でした。
問診票の件以外にも、猛暑の中での移動中にワクチンの保冷はどうするか、副反応が起きたときにはどう対応するか、急なキャンセルでワクチンが余ってしまった場合は?...など、考えることはたくさん!
医師だけでなく訪問看護師、災害対策室などとも一緒に手探りで前代未聞のワクチン接種を進め、最終的には6週間で約30人の患者さんに接種を完了しました。

そんなこんなでなんとかひと段落した「ワクチン隊」のことを、ぜひポートフォリオとして発表したい!でもどういう切り口にしようかしら?そんなことを今回の勉強会で相談しました。
勉強会は、指導医を始めとして諸先輩の先生方やNPさんと行いますが、肩ひじ張った雰囲気ではありません。みんなでワクチン隊のときの苦労話をしたり、ポートフォリオとして仕上げるならエントリー項目はここが一番合ってるんじゃないか、とか、話が更に拡大して、訪問診療を受けていなくて集団接種にも来られない人の接種はどうしたらいいかな、なんてことを話したり。
いつも他の先生方から自分だけでは思いつかないようなアイデアをもらえるので、この勉強会ではポートフォリオの質を高めるだけでなく自分の振り返りにも深みがでるような気がしてきます。

亀田クリニックでは最大1日4000人を超えるの集団接種や介護施設への巡回接種が行われ、在宅チームも交代で参加していました。私たち亀田在宅で個別訪問による接種を完了した人は30人。少ないようにも思うけれど、千里の道も一歩から。
今回の施行錯誤の経験が今後の診療にも活かせるといいなぁ、と思います。

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担当:フェロー 甲斐


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このサイトの監修者

亀田総合病院
在宅診療科 部長 大川 薫

【専門分野】
家庭医療学 在宅医療