ネーザルハイフロー Nasal High Flow™

亀田総合病院、呼吸器内科でも、昨年度よりネーザルハイフローを導入しました。当科では、特に間質性肺炎などのI型呼吸不全患者で用いることが多いです。

例えば、重症の間質性肺炎でリザーバーマスク8L-10L/minの酸素投与が必要な患者では食事摂取が困難でしたが、ネーザルハイフローを用いれば、高流量の高濃度酸素を経鼻で投与できるため、食事摂取が可能です。

以下は当院で使用しているNasal High Flow™ (Fisher & Paykel Healthcare. Inc.)に基づいた内容を書かせて頂きます。
*鼻カニュラはOptiflow™ (Fisher & Paykel Healthcare. Inc.)を使用。

概念

高流量(30-60L/分)で高濃度酸素投与が可能な鼻カニュラである。近年、本邦においても臨床で広く使われるようになった。

高流量だが加湿が十分になされているため鼻が痛くなることはなく、精度の高いFiO2を維持できる。

経鼻カニュラなので装着した状態で食事や会話、口腔ケアが可能である。

(ネーザルハイフロー装着中の写真。Fisher & Paykel社の資料より抜粋。)

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原理:構成要素

  1. 鼻カニュラ(Optiflow™)
  2. 流量が多いので、通常の鼻カニュラより太い。少し重いのでネックストラップを装着する。

  3. 加温加湿器、蛇管
  4. 加温加湿器と鼻カニュラを接続する蛇管に結露を防ぐために加温装置が存在する。

  5. ブレンダー(酸素と空気を混合)と酸素濃度計
  6. 病室に配管した圧縮空気と高圧酸素の両方を混合する専用のブレンダーを用いる。21%から100%までの濃度の酸素を供給することができる。
(亀田総合病院で使用しているNasal High Flow™の酸素濃度計の写真。最大60L/minまでの流量が投与可能である)

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主な効果

  1. 鼻咽頭の解剖学的死腔内にたまった呼気を洗い流す。
  2. 死腔換気率を減少させ、酸素化を改善する。
    (Australian Critical Care 2010;23:53-70)

  3. 精度の高いFiO2
  4. 高流量の高濃度酸素投与および死腔の洗い流しにより、精度の高いFiO2を実現できる。 (Respir Med 2009;103(10):1400-5)

  5. 軽度のPEEP(Positive end expiratory pressure)様効果
  6. 健常人では口を閉じた状態で、酸素流量を30、40、50L/min にすると気道内圧は 1.93±1.25 cmH2O、2.58±1.54 cmH2O、3.31±1.05 cmH2Oと上昇し、流量が多いほど気道内圧は上昇する。
    (Respir Care 2011; 56: 1151-5)

  7. QOLの維持
  8. 経鼻カニュラなので高濃度酸素投与しながら食事が可能である。

  9. 粘膜繊毛クリアランスの最適化

適応(第一選択を意味するわけではない)

COPD および COPD の急性増悪
肺炎
肺水腫
気管支喘息
急性肺損傷
 肺挫傷
 胸部外傷(胸郭動揺を含む)
ARDS
気管内挿管の抜管後 気管支鏡実施中の酸素吸入
急性心不全
終末期の低酸素血症(緩和を目的)
(日本呼吸器学会誌 2014;3:771-776)

禁忌

  1. PaCO2>48Torr
  2. 顔面の外傷で鼻カニュラを使えない状態。
  3. 気胸、あるいは気胸を疑うとき
  4. (日本呼吸器学会誌 2014;3:771-776)

*高流量の酸素を使用するため酸素費用が高額になり、ICUなど十分な加算が取れる病床でないと、費用的に使用が困難である。そのため、当院ではICU以外の病床では、HCUのみに限定し、さらに症例を絞って用いている。

*当院でもまだ適応は手探りの状態であるが、基本的にはI型呼吸不全に使用している。死腔を減らすことで換気補助となりPaCO2を低下させるという報告もあるが、高度の高CO2血症を伴い明らかに換気補助が必要なケースでは、非侵襲的陽圧換気もしくは挿管人工呼吸管理を考慮すべきである。

当科における使用例

  1. 間質性肺炎急性増悪
  2. 間質性肺炎急性増悪は、その多くがI型呼吸不全を呈するため、呼吸管理においては、換気のサポートよりも、酸素化の改善が主体となる。ネーザルハイフローを用いれば、高流量の高濃度酸素により安定した酸素化改善が実現できる。また間質性肺炎急性増悪は、酸素化が不良でも、循環を含む他の臓器機能は保たれていることが多く、ネーザルハイフローで高流用の高濃度酸素を投与中でも、食事摂取が可能となる。

  3. 急性呼吸不全における気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage: BAL)
  4. 通常、BALは、経鼻2-3Lを超えてくると施行が困難となってくるが、ネーザルハイフローを用いれば経鼻カニュラで高濃度酸素を投与可能なので、BALが比較的安全に施行可能である。間質性肺炎増悪を疑うような患者の場合、BAL後もそのままネーザルハイフローを装着することで、酸素化の安定を図ることが可能である。
    気管支鏡検査中に、ネーザルハイフロー60L/min、ネーザルハイフロー40L/min、ベンチュリーマスク40L/minの3グループで比較し、ネーザルハイフロー60L/min群が有意にPaO2、FiO2、SpO2が高かったと報告されている。
    (Crit Care Res Pract. 2012;2012:506382.)

使用上の注意

酸素濃度を正確に供給するためには、患者の吸気流量を上回る必要がある。患者の口・鼻の周り手を当てて、吸気時に外気の吸い込みがあれば、流量が不足している。吸気時にも鼻孔周囲からガスが漏れるように流量を設定する。

このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患