胸膜原発孤立性線維性腫瘍 Solitary Fibrous Tumor of the Pleura (SFTP)

胸膜原発孤立性線維性腫瘍(Solitary Fibrous Tumor of the Pleura : SFTP)は、比較的稀な腫瘍です。

無症状で増大することが多く、呼吸不全を呈して初めて発見されるケースなどもあり、亀田総合病院呼吸器内科でも稀に経験しますので、まとめました。

概念

SFTPは未分化間葉系細胞を由来とする稀な軟部組織腫瘍である
(Cancer Control. 2006;13:264-269.)

成人男性で、平均年齢は55歳〜65歳に多い。

症状

診断時におおよそ2/3の症例で、咳嗽、呼吸困難、胸痛などの非特異的な呼吸器症状を認める。
(Ann Thorac Surg. 2012 Aug;94(2):394-400.)
(J Thorac Oncol. 2012;7(11):1698.)

また、無症状で、偶然施行された胸部画像検査で発見される場合も多い。

腫瘍随伴症状を認めることもあり、10〜20%で肺性肥大性骨関節症を認め、5%でインスリン様成長因子IIを分泌し、再発性低血糖を5%で認める。

診断

十分な量の組織検体に対する病理学的評価が必要であるため、組織診断は多くの症例で腫瘍の外科的完全切除によって同時になされる。

胸部CTでは、胸膜表面から発生した境界明瞭な軟部腫瘍を呈する。画像所見で巨大腫瘍が胸膜や縦隔のどこから発生しているかの推定は可能だが、通常は手術をするまでは確定できない。
(Curr Opin Pulm Med. 2012 Jul;18(4):339-46.)

病理

pattern-less patternやhemangiopericytoma-like patternと呼ばれる組織像を特徴とするが、これらは孤立性線維性腫瘍に特異的な所見ではない。

よって、鑑別診断は、免疫染色によって行われ、CD34、Bcl-2、CD99が陽性になることが多く、cytokeratin、α-SMA、S-100蛋白が陰性となる。
(肺癌.2011;51:724-729)

多くのSFTPは良性だが、下記の組織学的特徴は悪性を示唆する。I:核分裂像が多い(10倍視野で4個以上)、II:壊死巣の存在、III:細胞密度が高い、IV:核異型の存在。
(Am J Surg Pathol. 1989 Aug;13(8):640-58.)

(当院で経験したSFTのCT所見:内部壊死を伴う左巨大腫瘍を認めた。
右上葉・舌区・左下葉は虚脱し、縦隔は右方にシフトしていた。)


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治療・予後

外科的完全切除がSFTPの標準的な治療である。
(Curr Opin Pulm Med. 2012 Jul;18(4):339-46.)

1980年から2010年にかけた単施設における157例の切除例の報告では、全てが一括切除され、57%が良性のSFTPと診断され、43%が悪性と診断された。腫瘍径の中央値は、9cm、平均の重さは941gであった。悪性SFTPの方が良性SFTPよりも大きかった。平均フォローアップ期間は14年で、初回切除から中央値29ヶ月で、10%が再発した。
(Ann Thorac Surg. 2012 Aug;94(2):394-400.)

良性であっても再発することが報告されている。
(Am J Surg Pathol. 1989; 13:640-658.)
(日呼外会誌.2001;15:54-59.)

参考文献

1. Michael E Ross, MD. Solitary fibrous tumor of the pleura. Up To Date. last update Feb 2015

このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患