脳卒中

「脳卒中」という言葉は、脳に卒然(=突然)、中る(あたる)ということに由来します。
文字通り、ある瞬間に脳の血管が詰まったり破れたりして突然発症する病気の総称です。
生命に関わることや、後遺症を残すことが多く、近年の調査では死因の第3位、介護が必要になった原因の第2位に挙げられています。
2018年に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が成立し、 2019年12月より施行されたのは記憶に新しいところです。
このように、脳卒中は国を挙げてその対策を行うべき問題として認識されています。
以下に脳卒中に含まれる具体的な疾患を説明していきます。

1.血管が破れる病気(出血性脳卒中)

1)脳内出血・脳出血
脳卒中全体の10%強を占めます。
脳に血液を供給する細い血管が破れて、脳の中に出血を起こします。出血するのは脳の中であり、出血した部分の神経細胞を障害することでその場所に応じた症状が出現します。多くの場合は高血圧症や加齢による動脈硬化でもろくなった血管が原因ですが、稀に脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻、脳動脈瘤など異なった原因によるものも見られます。治療はまず血圧を下げて安静にすることに始まり、再発予防のための継続的な高血圧の治療やリハビリテーションに繋がります。出血の量や部位、症状などによっては手術で血液を除去したり、原因疾患を治療するために開頭手術や脳血管内治療を行うこともあり得ます。

2)くも膜下出血(外傷によるものを除く)
脳卒中の約3%を占めます。
突然経験したこともないような激しい頭痛が起こるのが特徴ですが、軽症で何日か自宅で様子見される方から、突然倒れて昏睡、死に至る方まで様々です。ほとんどの場合、比較的太い脳動脈にできた脳動脈瘤の破裂によるものですが、中には脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻など稀な原因によることもあります。出血した脳動脈瘤は一時的にかさぶたがついて止血していますが、いつ再破裂するかわからない危険な状態ですので、病状が許す限り再出血の予防(脳血管内治療によるコイル塞栓術や開頭でのクリッピング術)を行います。ほとんどの場合脳動脈瘤は破裂するまで自覚症状はありませんが、稀に物が二重に見えたり、まぶたが片目だけ落ちてきたりといったことを代表とする、脳神経の症状が起こる場合があります。その際は破裂手前のサインである可能性がありますので、早急な受診が必要です。

2.血管が詰まる病気(虚血性脳卒中)

1)脳梗塞
脳卒中の内訳で最も多いものが脳梗塞です。脳卒中の実に75%を占め、脳を栄養する大小の血管が詰まってしまい発症します。発症機序としては、血栓性(動脈硬化の進行によるもの)、塞栓性(どこかから血の塊が飛んでいって急に脳の血管に詰まるもの)、血行力学性(動脈硬化などで細くなった血管で何とか頑張っているときに、脱水や血圧低下などにより最低限の血流が維持出来なくなって起こるもの)の3つがあります。
またこれらの機序で実際に起こる病型としては、アテローム血栓性脳梗塞(動脈硬化や汚れの沈着などで細くなった血管による)、心原性脳塞栓(心房細動を代表とする不整脈により心臓内に出来た血の塊「血栓」が脳に飛んでいくことによる)、ラクナ梗塞(細い血管の動脈硬化による小さな脳梗塞)が代表的です。
薬物やリハビリテーション以外に、頚動脈狭窄症や心原性脳塞栓による超急性脳梗塞(リンク)はカテーテルによる脳血管内治療が良い適応になり得ます。

2)一過性脳虚血発作
脳梗塞と同じ機序で一時的に脳血流が低下/脳血管が閉塞することによって、脳梗塞と同様の症状を出します。ただ脳梗塞と大きく異なるポイントは、名前の通り症状が一過性であり24時間以内に回復することです。これは脳梗塞の重要な予兆であり、回復したからよかったと様子を見るのではなく、早急に病院を受診するべき疾患です。

このように脳卒中は突然我々を襲い、生命や脳の機能を奪ってしまう恐ろしい病気です。もし脳卒中を疑う症状が出現したら、迷わず急いでの受診をお願いします。
脳卒中は起こった後の治療も非常に重要ですが、中には前述の通り予兆があったり、未然の検査・治療で防ぐことができるものもあります。
これらについてこのコラムでも触れていきます。

脳血管内治療科 門岡 慶介

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このサイトの監修者

亀田総合病院
脳血管内治療科主任部長 田中 美千裕

【専門分野】
脳卒中の外科治療、脳血管内手術、脳機能解剖学、脳循環代謝学、脳動脈瘤に対する血管内手術、頚動脈ステント術、脳血管奇形、脳動静脈奇形、脊髄血管奇形、顎顔面血管腫