膀胱全摘術後の尿管回腸導管吻合部狭窄と骨盤臓器脱(小腸瘤)の合併症例

~医原性の合併症に応える~

【症例】70歳+α
【治療経過】
2020年:腹腔鏡下膀胱全摘除術+回腸導管造設術
 術後、骨盤臓器脱、ストマサイトヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニア
2022年:傍ストマサイトヘルニアと腹壁瘢痕ヘルニアop
 ダブルペッサリーでフォローされていたが、帯下増加やリングの間から臓器脱があり当院コンサルト。

【当院での評価】
CTで左水腎症と著明な骨盤臓器脱(小腸が透見され、腟瘢根部に腸管の癒着)


左水腎症


ダブルペッサリーでも腸管の脱出を認める。

2023.8【腹腔鏡下回腸導管左尿管再吻合、骨盤臓器脱修復術、癒着剥離術】
5POD退院
14POD左尿管ステント抜去


癒着剥離


経腟的に不良腟組織を切除しつつ、癒着した腸間を剥離、血流の良い腟壁を縫合。


さらに腹腔から2層目を縫合補強


狭窄部位を切除し、新しく回腸導管とひだり尿管を再吻合

【考察】
骨盤臓器脱の修復術と尿管吻合部狭窄の修復術を同時に行った症例です。尿管回腸導管吻合部狭窄に対してはステントを留置あるいは腎瘻造設でしょうか?または腎盂腎炎などの合併症が起こるまで経過観察されておられるかもしれません。
尿管結石がつまり水腎症になっていれば、腎保護目的に結石の治療(砕石)を勧めると思います。「尿管結石の治療ができる!」自信と技術があるから勧めることができます。
尿管回腸導管吻合部狭窄となると、「癒着」「再吻合」などハードルが高くなるため根治術が施行されないケースが多くなるかもしれません。ステント留置で何度も閉塞腎盂腎炎を繰り返す方へ、あるいは腎瘻と回腸導管の二つの尿路管理をされている方に、QOLを改善する施策を提案が出来る様になると良いですね。
「医療技術」と言うものは上から下にしか提供できません。技術力が未熟なのに、頑張ってしまうと合併症が怖くなります。

高いハードルを飛べるようになるために!
日頃から手術技術を一生懸命鍛えるようにしましょう。ビデオは編集していないものや自身の行ったものをたくさん観ることで、改善点見つけ次に繋げていきましょう。
良い手術を観に行く事も大切です(現場でのアドバイスや器具の取り扱いなどビデオだけでは気づかないことがたくさんあります。)、良い手術を行うために基本技術を身につくまで繰り返しトレーニングをしましょう。

このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術