女性の慢性膀胱炎について

慢性膀胱炎 (反復性膀胱炎、難治性膀胱炎)しっかりと診断できていますか?
繰り返す膀胱炎や膀胱炎が治らない時は、膀胱炎を引き起こす原因をしっかりと精査する必要があります。
臨床症状、尿検査、尿培養で「膀胱炎ですね、抗生物質処方しておきますね。効かないときは耐性菌などの可能性もありますので症状が治らない時は違う抗生剤が必要になります」こんな診療風景は容易に想像がつきます。
当たっていますが、性交渉と関係なく繰り返す膀胱炎の場合、その原因の鑑別診断をすることが大事です。

慢性膀胱炎の原因は女性では

  1. GSM
  2. 神経因性膀胱
  3. 骨盤臓器脱
  4. 膀胱癌
  5. 糖尿病
  6. 耐性菌
  7. 膀胱結石

など鑑別診断にあげられます。
とくに50歳を過ぎた女性の繰り返す膀胱炎で最も多い原因は、閉経関連尿路生殖器症候群(Genitourinary Syndrome of Menopause:GSM)と考えられます。性交渉と関係なく年に2度も膀胱炎になるなど膀胱炎の主な原因がないにもかかわらず膀胱炎を繰り返してしまうことがあります。
閉経後は腟粘膜の萎縮は腟の乾燥感、灼熱感、性交痛や不快感などと関連し、尿路症状では切迫感、排尿困難、反復性膀胱炎などが知られるようになりました。これらを総称してGenitourinary syndrome of menopauseと提唱されるようになりました。1)
このような症状を膀胱炎と診断し、抗生剤投与に頼っていると耐性菌を引き起こす原因にもなります。好ましい治療と言えません。

そこで、お勧めの診断方法として、「膀胱鏡」の施行です。
慢性膀胱炎の原因精査で膀胱鏡検査で、時にに膀胱がんが見つかることもあります。膀胱粘膜の状態、排尿筋の肉柱形成、慢性膀胱炎像など膀胱内の状態や、尿道では尿道粘膜のひだの厚みなどもわかります。点滴ルートをつなげば、膀胱内圧も簡易ながら測定することも可能です。膀胱鏡はがんの有無を診断するだけのものではありません。
閉経後の女性では腟内の観察がとても有意義な検査となると感じています。腟内の粘膜所見、白苔の有無、易出血性、天井出血、びらんなどカメラで拡大視野下に容易に診断できます。
GSMの診断がつけば、女性ホルモン補充や、乾燥予防のための軟膏を処方するなど治療法も大きく変わってきます。

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正常の腟粘膜:厚みがあり

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GSMの腟粘膜:薄くなったいつ粘膜が確認できる。

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正常の尿道粘膜:厚みがある。

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GSMの尿道粘膜:ひだの厚みが薄くなっている。

1)Genitourinary syndrome of menopause: new terminology for vulvovaginal atrophy from the International Society for the Study of Women's Sexual Health and the North American Menopause Society.
Portman DJ, Gass ML; Vulvovaginal Atrophy Terminology Consensus Conference Panel.J Sex Med. 2014 Dec;11(12):2865-72.

このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術