膀胱腟ろう(vesicovaginal fistula:VVF)3度目の手術は?

【症例】60+α歳
【現病歴】
数年前に広汎子宮全摘術施行され、術後1週間目より尿漏れを自覚され、半年後に腹腔鏡下瘻孔閉鎖術+Martius Flap施行されるも、尿漏れ継続し、再度半年後経腟的に瘻孔閉鎖術を施行されるも尿漏れが継続されていた方です。他院より当科を受診されました。
【膀胱鏡所見】 膀胱内結石多数、左尿管口から後壁に3mm大の瘻孔
【腟内内視鏡所見】 腟断端左側に瘻孔
【問題点】

  1. 膀胱結石(感染結石)
  2. 癒着
  3. 尿管

感染のコントロール、癒着剥離をどうクリアするか、瘻孔切除の際、必要なら尿管膀胱新吻合術を行うなど問題点があります。
それぞれ、感染コントロールは術前より適した抗生剤を投与、膀胱結石を砕石除去し、3日後に腹腔鏡下膀胱腟ろう閉鎖術を施行しました。経腟的にガイドワイヤー挿入し瘻孔を拡張し10frの腎盂カテーテルを瘻孔内に留置、4ポート、頭低位15度にて施行しました。癒着剥離に2時間要しましたが、手術時間は3時間30分、出血量は少量でした。3PODドレーン抜去、7POD膀胱留置カテーテル抜去、お迎えの都合で9日目退院となりました。

今回のポイントは3度目となり、経腟的に行うか腹腔鏡下で行うかという選択になるかと思います。腹腔鏡下手術は手術視野が有利で、瘻孔切除が容易、尿管の修復が行いやすい、などメリットがありますが一方で、癒着剥離技術や縫合技術が求められます。日頃からのトレーニングが欠かせません。

最近では難しいVVFの症例にもロボット手術でのVVF根治術が報告されるようになりました。Sayegh ASらは放射線治療後のVVFに対し、ロボット手術で手術時間9時間、出血量300ml、さらに高気圧酸素療法を組み合わせるなどの治療で良好な経過であったことを報告しています。1)

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癒着

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瘻孔壁は切除します

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腟壁縫合                膀胱粘膜縫合(膀胱は2層に縫合します)

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大網充填(膀胱と腟の間にしっかりと押し込みます)

【参考文献】
1) Sayegh AS, La Riva A, Perez LC, Rangel E, Medina LG, Adamic B, Sotelo R. Int Urogynecol J. 2022 Sep;33(9):2581-2585. Robotic-assisted vesicovaginal fistula repair using a vaginal cuff flap.

このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術