手術の指導について

大学3回生の薬理学の初めての授業だったと思います。その当時の宮崎教授の授業で、いの一番に発せられた言葉を思い出します。
「前、後ろ、となりを眺めてみなさい。将来自分が病気になった時、自分の命を預けられる友達はこの中にいるかよく考えておきなさい。」
この言葉の真意は、友達が信頼できる医師になりなさい。つまり、自分を磨きなさいとの事だったと思います。

「なぜ自分自身のスキルを磨いたりするの?」の問いに、明確な答えをもっていますか?明確な答えの中に自分自身を高める理由があると思っています。もちろん患者さんのために磨きます。誰しもこのように答えが返ってきますが、ある一定のレベルで満足してしまっていませんか?自分をプロとして高めていますか?

私が若いとき、正直に言うと、陰嚢水腫の手術で手が震え、外科医に向いていないのではと落ち込んだことがあります。
今こうして指導する立場となり口うるさ過ぎ?自分のスキルは教えるに充分なのか?と迷うこともあります。それに自分自身の手術を振り返っても「まだまだ青い」と感じます。
しかし手術の適応や、術式、アプローチ方法などなど一人一人、迷うこと、悩むことこそ大事だと思っています。自身の心の声に従って行動することです。迷ったり、悩んだり、不安があったら気軽に相談できる環境や人脈も大事です。

今、私が言える明確な答えは「自分が行う手術手技が自分に返ってくる!」から一生懸命にスキルを磨く、一生懸命手術を教えています。自分が前立腺癌になった時、自分で理想的な手術を自分にはできないからです。病変が片側だけなら神経温存を正確にして欲しいですし、病変が浸潤している可能性があるならしっかりとMarginをとって手術をして欲しいです。尿道と膀胱の縫合はきっちり練習してから手術をして欲しいと思うのは当然のことでしょう。
日々スキルアップして、腕を磨いているDrが少しくらい上手くいかなくても許せる気がします。
与えられた仕事はなかなか身に付きません。自分から求めてこそスキルアップに繋がります。
自分のエネルギーを注げる選択肢を選択できる勇気と目の前の安きちっぽけなご馳走には目を背ける芯の強さをもってください。

220321img1.jpg外科医として尊敬する大野先生と

このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術