土曜日の運用

本年もよろしくお願いいたします。

本年最初の土曜日手術、腹腔鏡下左腎尿管膀胱全摘除術+回腸導管造設術1例、腹腔鏡下仙骨腟固定術1例、左尿管鏡検査1例、前立腺生検1例、経尿道的膀胱腫瘍切除術1例でした。
金土日を利用した入院希望の方にはとても良い手術枠であると思います。

【腹腔鏡下左腎尿管膀胱全摘除術+回腸導管造設術】

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リンパ節転移を有する方で術前の化学療法が腫瘍内科で行われました。GC療法が基本ですが、腎機能障害や年齢によって化学療法も調整が必要となります。
GEMとNDPのdoseを調整し、リンパ節転移が消失したケースです。骨髄抑制への対応など専門的なアプローチが必要となっており、当院の腫瘍内科Drsの治療経験、知見、判断などなど日々素晴らしいと感じています。
心筋梗塞、糖尿病などの既往がありましたが、麻酔科医師の術前判断により、迅速な手術が求められました。
外科医の技術力を麻酔科医も判断し麻酔可能かどうか判断されています。日々の信頼関係を築くことは本当に重要であると思います。

【腹腔鏡下仙骨腟固定術】
10年前に骨盤臓器脱にて腟式子宮全摘+前腟壁形成+後腟壁形成+腟断端挙上術(Immon+McCall変法)されていました、10年後の再発になります。StageIVの骨盤臓器脱です。経会陰エコーで膀胱瘤、小腸瘤を診断できましたか?
腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)は、ERAS管理にて膀胱留置カテーテルは入らないため術後3時間で歩行され、トイレで排尿されます。2泊3日の入院でした。

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220115img3.jpg 安静時 尿道長計測

220115img4.jpg 腹圧時の骨盤底の様子

【尿管腫瘍、尿管鏡検査】

220115img5.jpg 右尿管腫瘍、水腎症を伴い尿管壁の状態、尿管鏡所見から浸潤がんが疑わしい。
右単腎の右尿管腫瘍の診断でした。CTで充分診断はつきますが、尿管鏡検査で腫瘍まで検査ができなかったこと、細胞診IIIのため、当院を受信されました。 良性かもしれないという期待もされたと思います。
尿管鏡検査は尿管が狭く腫瘍まで観察できず、尿管ステントが留置されていました。
男性患者ではしばしば生理的尿管が狭い方に遭遇します。尿管ステントを留置されるとpassive dilatationにより尿管鏡が通りやすくなります。
腎盂尿管観察、腎盂細胞診、腫瘍生検を行いました。
悪性疾患の場合は迅速な対応ができていない場合や不確実因子が重なると患者さんの不安につながります。

〜尿管がんの予後因子について:術前因子〜

  1. 腎尿管全摘を行った年齢が高い
  2. 喫煙は予後とかかわり、膀胱再発率にも影響する
  3. 腫瘍の位置が尿管や多発している
  4. 浸潤がんの場合、治療が遅れると進行するリスクが高くなる。手術は12週間以内が望ましい
  5. 腎尿管全摘後のCancer-specific survivalはASA scoreに関連する

〜上部尿路の尿路上皮癌の治療アルゴリズム〜
対側の腎臓が正常ならば、腎尿管全摘はゴールドスタンダードです。
EAUは2018年に腎機能温存マネジメントについて、リスク適合プロトコールを考案しています。1)高度な腎機能障害 2)単腎 3)両側腫瘍 4)手術が難しい場合などと、がんコントロールと掛け合わせます。

Low-Risk UTUC
Clinical factors
Low-grade biopsy
Low-grade cytology
Tumor <1cm
No invasive features on imaging
Unifocal disease
Compliant patient

BOX99.1 Risk - Adapted Protocol for Kidney sparing Management  1)

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1)European Association of Urology Guidelines on Upper Urinary Tract Urothelial Carcinoma;2017 Update. Eur Urol 73:111-122,2018

このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術