腹腔鏡下仙骨腟固定術の子宮温存あるいは子宮摘除について

海外の患者アンケート結果とともに。

【症例】85歳+α歳
【主訴】性器下垂感
【現病歴】約10年前より性器下垂感があった。
    パートナーとの性交痛あり。
【既往歴】虫垂炎

【治療方法】腹腔鏡下仙骨腟固定術(子宮・卵巣温存):手術時間2時間08分 出血量:微量

【考察】
85歳以上でのパートナーとの性生活があることに、何事も年齢だけで話を進めてはいけないと学ばされました。性生活がなければ、全身状態に応じて腟閉鎖術、重症度に合わせてメッシュの使用を検討するかと思います。ご本人の希望と、手術前の検査、麻酔科医の術前判断により充分手術が可能となりました。

年齢や術者の好みによって、術式を押し付けてしまっている可能性があります。手術の際は、標準にとらわれず、検討したいものです。

アメリカで行われた調査で、「あなたは骨盤臓器脱の治療の結果が同じならば、子宮温存を希望しますか?それとも子宮を取りたいですか?」という調査結果をまとめています。子宮温存を希望された方は36%、子宮摘除を希望された方は20%でした。1)
子宮温存される方には子宮を温存する術式で臨み、子宮を摘除希望される方は子宮を摘除する術式で検討したいものです。ただ、子宮全摘除術をメッシュ手術と併せておこなうと、メッシュ露出リスクがあがるため、子宮全摘除術は行われません。このため、子宮の上半分だけを切断する方法が一般的になっています。2) 当科で行われるメッシュ露出の危険性が低い子宮全摘除術方法については、また解説したいと思います。

医療者は患者さんの病気を治すサポート役として存在しています。

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【参考文献】

1) Patient preferences for uterine preservation and hysterectomy in women with pelvic organ prolapse. Korbly NB, Kassis NC, Good MM, Richardson ML, Book NM, Yip S, Saguan D, Gross C, Evans J, Lopes VV, Harvie HS, Sung VW.Am J Obstet Gynecol. 2013 Nov;209(5):470.e1-6.
2) Prevalence and risk factors for mesh erosion after laparoscopic-assisted sacrocolpopexy. Tan-Kim J, Menefee SA, Luber KM, Nager CW, Lukacz ES.Int Urogynecol J. 2011. Feb;22(2):205-12.

このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術