Boari Flapを用いた修復術

【症例1】50+α歳、女性
【既往歴】なし
【手術歴】なし
【アレルギー】なし
【喫煙歴】なし
【現病歴】8cm大のひだりチョコレートのう胞の診断で201x/1腹式子宮全摘除術+両側付属器切除を施行された。手術後病理組織内に尿管組織を認めたため、1週間後逆行性腎盂造影、CTが施行された。
【逆行性腎盂造影】膀胱から1.2cmの尿管が造影される。
【CT】左水腎症
7POD【ひだり腎瘻造設】

【その後の経過】1か月後今後の治療方針について同年2月当院へ相談で受診。
【当院でのカンファレンス】創傷治癒期間中で術後3カ月以上期間をとり、腹腔内の状態が落ち着いてから新吻合術の方針となった。
【IC】ご本人の気持ちの整理や仕事の関係で9月の手術となった。

201x+9 【腹腔鏡下ひだり尿管膀胱新吻合術(Boari Flap】 
手術時間:3時間50分、出血量10ml
術後経過:1か月後、尿管ステントを抜去
水腎症などなく経過良好。

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上図:漏斗靱帯と左尿管がシーリングされている。
下図:左が漏斗靱帯、右がシーリング切断された尿管

【脱膜化を!】
漏斗靱帯の際の処理で尿管、漏斗靱帯が共にならんでシーリングされていることから、同部での脱膜化が行われずに、漏斗靱帯をシーリング切断されていたと考えられます。損傷を避けるためには腹膜を丁寧に剥離し脱膜化がすると良いと考えます。

「漏斗靱帯処理でリガシュア®によるシーリングには注意が必要です。」

【ワンポイント】
尿管血管交差部や漏斗靱帯あたりでの尿管-膀胱新吻合術Psoas hitchでは膀胱と尿管が届かない症例も膀胱前壁でFlapを作成(Boari Flap)することでかなり余裕をもって尿管膀胱新吻合術を行うことができます。吻合部へのテンションが狭窄や縫合不全の原因になるため、テンションフリーで吻合することが重要と考えます。

「吻合部のテンションはフリーになるように!」

1.Boari Flap作成

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2.外腸骨血管を超えた位置で尿管膀胱吻合

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このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術