浸潤性膀胱がん+心・腎機能低下症例2

亀田メディカルセンターならではの日常臨床をご紹介したいと思います。

【症例2】7α歳、男性
【既往歴】#1 陳旧性心筋梗塞(OMI) #2 ASO #3 心房細動(Af) #4 慢性腎臓病(CKD) #5腸閉塞
【抗凝固剤】クロピドグレル プロレナール ワーファリン
【手術歴】冠動脈
【アレルギー】造影剤
【喫煙】6箱/日以上×37年

【現病歴】ASOにて前医入院していたところ尿検査でUC疑いにてCS施行したところ右側壁、頂部に乳頭状腫瘍多発していた。転居に伴い当院紹介。
201x/4 【TURBT】【病理診断】尿路上皮癌(UC)、high grade、pT1
201x/10 【TURBT】【病理診断】尿路上皮癌(UC)、high grade、pT1
201x+1/4 【画像】T3,N0,M0

201024img01.jpg【問題点】
OMIにて冠動脈に計5個のステントが留置されていることもあり、抗凝固療法として3剤併用されている
ASOにて2回のグラフト手術、2回のステント留置が行われている。
【EF】37%
【eGFR】33-37

【術前評価】
循環器内科:現在虚血状態にはなくボリュームコントロールが上手くいけばopは問題なし
麻酔科:PS0、冠動脈治療後で麻酔は可能

【治療方針カンファレンス】                 泌尿器科、腫瘍内科
画像上進行が速い、化学療法で先延ばし腎機能障害進行、全身状態悪化してからでは根治療法は困難。本人の希望もありop方針。

【入院治療経過】
術前ヘパリン置換にて抗凝固療法継続
201x+1/5 【腹腔鏡下膀胱全摘+回腸導管造設術】
     手術時間:5時間15分 出血量70ml
     抜管後軽度の心不全症状あり
     術後ICUへ 術後3時間でヘパリン開始        集中治療科
1POD HCU転床、飲水開始
2POD 食事開始、一般床転床
3POD 呼吸苦有りBNP上昇有り、フロセミド投与、症状改善
5POD ワーファリン内服再開
14POD 尿管ステント抜去
16POD 退院

現在も元気にされています。

【ポイント】

  • 循環器内科で適切な治療が行われており、全身麻酔が可能と判断された。
  • 術後、心不全症状を認めたが麻酔科、集中治療科による適切な全身管理が行われた。
  • 3PODで3rd spaceからの水分の戻りで心不全症状が出現したが、後期研修医の適切な判断で利尿薬投与が滞りなく行われた。(初期研修を当院でトレーニングされていた)

ワンポイント:
どんなに手術が上手くできても合併症がゼロであることはありません。術前からの準備や、手術後のサポート体制によって手術を施行できる幅が変わってくると思います。

このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術