亀田メディカルセンター｜亀田総合病院 泌尿器科【K style, The road to UroMaster】

亀田メディカルセンターならではの日常臨床をご紹介したいと思います。

【症例1】60＋α歳、男性
【既往歴】心筋梗塞
【手術歴】201α　冠動脈バイパス術
【生活歴】喫煙：なし　飲酒：機会飲酒
【現病歴】201x.9.Yから無症候性肉眼的血尿があった。他院より心機能低下があり、根治療法の相談で受診。
【心機能】EF 30-35%
【腎機能】eGFR35.5
【抗凝固剤内服】ワーファリン、バイアスピリン
【膀胱がん治療歴】
画像診断：T3,N3,M1（大動静脈間、総腸骨、内腸骨リンパ節転移）
201x.12.　【TURBT、右腎瘻造設】
　【病理診断】G3,pT2以上
201（x+1）/1　〜　【GC療法】4コース
201（x+2）/6〜7　【CDDP10mg/日】+【放射線治療】
（小骨盤内照射：総腸骨リンパ節領域40Gy）
201（x+2）/10〜　【GC療法】6コース
201（x+4）/2　　　【CT】再発転移なし
201（x+4）/3　　　【TURBT】左側壁、後壁、前立腺部：UC,G2>3,ｐTis

【治療方針カンファレンス】　　　　　　　　　　　　　泌尿器科、腫瘍内科
１.　TUBTでねばる　
　　or
２．膀胱全摘+回腸導管　など

【問題点】

• 心機能低下
• 腎機能低下
• 小骨盤腔への放射線照射後

【治療経過】
20（x+4）/5　【腹腔鏡下膀胱全摘+回腸導管+尿道抜去】 　　
　　　　　手術時間5時間30分　出血量150ml　右腎瘻抜去
術直後　Hb13.5　　術前15.6　　　　　　　　　　併診　ICU：集中治療科
術後3時間　水分摂取
POD1　離床　食事開始　　ヘパリン開始　　　　　 併診：リハビリテーション
POD2　食事5割
POD4　ワーファリン開始
POD7　ドレーン抜去　
POD21　両側尿管ステント抜去　
（小骨盤腔放射線照射や、術中右尿管が細かったため： 3週間での尿管ステント抜去とした。当院から遠方に居住でもあり）

【病理】　Invasive urothelial carcinoma(浸潤性尿路上皮癌)、high grade、前立腺浸潤あり、リンパ管、静脈浸潤あり、ｐT4a

【現在】　術後経過は良好、転移は認めず。

〜　亀田メディカルセンター　麻酔科、集中治療科の管理能力の凄さがわかります 〜
ポイント１：心機能、腎機能を考慮し、術前に麻酔科医と相談できたこと
ポイント２：放射線治療後の外科的治療が行えること
ポイント３：手術時間を極力短く抑える対策を立案し実行できた。
ポイント４：術中の麻酔管理が適切であった。
ポイント４：ICUにおいて集中治療科のハイケアが行われた。
ポイント５：ERASプロトコールを導入しており、早期離床、早期食事開始など

ワンポイント：
大きな手術では周術期管理（手術前後の体調管理）が味噌と言っても過言ではありません。
実際、膀胱全摘における心機能や腎機能低下症例では予後のリスクファクターとして知られています。1）
ERASプロトコールにより早期離床、早期経口摂取がより回復を早めます。2）
経験のある施設での手術施行がリスクを軽減すると言及されています。

1）Age, American Society of Anesthesiologists physical status classification and Charlson score are independent predictors of 90-day mortality after radical cystectomy. Novotny V, Froehner M, Koch R, Zastrow S, Heberling U, Leike S, Hübler M, Wirth MP. World J Urol. 2016 Aug;34(8):
2）Guidelines for perioperative care after radical cystectomy for bladder cancer: Enhanced Recovery After Surgery (ERAS(®)) society recommendations.
Cerantola Y, Valerio M, Persson B, Jichlinski P, Ljungqvist O, Hubner M, Kassouf W, Muller S, Baldini G, Carli F, Naesheimh T, Ytrebo L, Revhaug A, Lassen K, Knutsen T, Aarsether E, Wiklund P, Patel HR.Cerantola Y, et al. Clin Nutr. 2013 Dec;32(6):879-87.