去勢抵抗性前立腺がん+浸潤性膀胱がん

亀田メディカルセンターならではの日常臨床をご紹介したいと思います。

【症例】75+α歳、男性
【既往歴】心房細動、脂質異常症、高尿酸血症
【手術歴】鼠径ヘルニア
【生活歴】喫煙:20本/日×36年 (55歳〜禁煙) 飲酒:機会飲酒
【現病歴】:201x.9.Yから無症候性肉眼的血尿があった。他院では治療が難しいといわれた。
【内服薬】ワルファリン®、カンデサルタン®、ザイティガ®、プレドニゾロン®、ワンアルファ®
【前立腺がん治療歴】
12年前に前立腺癌の診断で小線源治療を施行し、追加IMRT施行
その後、転移を認めた201z年から去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)にてザイティガ®内服。

201x/10/ 【TURBT】 
      【病理】high grade(G3),Invasive urothelial carcinoma、pT2

【治療方針カンファレンス】                   泌尿器科、腫瘍内科
1.secondTURにて深層切除、CRPC治療継続
  or
2.膀胱全摘+回腸導管

【問題点】
心房細動(ワルファリン)
小線源+IMRT後

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【治療経過】
201x/12/ 【腹腔鏡下膀胱全摘除術(尿道抜去)+回腸導管造設術】
      手術時間:5時間21分、出血量:65ml
      術後ICUへ                     併診 ICU:集中治療科
1POD ヘパリン開始                           
2POD 術後出血      
    【止血術】 腸間膜からの出血
4POD  ヘパリン開始
10POD  右傍結腸 ドレン挿入部に膿瘍形成あり  グラム陽性球菌(GPC)
     ABPC/SBT+VCM開始                 併診 感染症科
2週間の点滴抗生剤治療の後退院。

【病理】 前立腺:GS5+4=9,pT3a
    膀胱:high grade(G3),pT2
    切除断端は陰性

【現在】術後経過は良好で仕事復帰。
    ホルモン療法施行なく、PSAは感度以下

〜亀田メディカルセンター各科の連携が活きた。〜
ポイント1:腫瘍内科医の目線と併せ治療方針が立てられたこと
ポイント2:放射線治療後の外科的治療が行えること
ポイント3:心房細動など抗凝固療法中でも、集中治療科の管理で全身管理が行えたこと
      術後出血も早期発見早期治療に結び付けた。
ポイント4:術後の感染症について、感染症科の適切な治療判定と、適切な抗生剤選択が行えた。

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ワンポイント:
今回、前立腺がんの治療後膀胱がんが見つかった件で、患者さまから、「なぜ膀胱がんがでてきたのか?」という質問を受けました。
考えられる膀胱がんのリスクは、喫煙歴があったことが一つ、もう一つは放射線照射後に2次がんとして膀胱がんが発症した可能性です。1)
小線源やIMRTは近接臓器への照射が極めて少なく、安全とされていますが、2次がん発症のメカニズムなど分かっていないことも確かです。

1)Second malignancies after radiotherapy for prostate cancer: systematic review and meta-analysis; Wallis CJ, Mahar AL, Choo R, Herschorn S, Kodama RT, Shah PS, Danjoux C, Narod SA, Nam RK. BMJ . 2016 Mar 2;352:i851. doi: 10.1136/bmj.i851.

このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術