「Dr.Moody round conferrence.」 vol.3

月一度のムーディー先生のラウンドカンファレンス。片言の英語で、各症例をプレゼンテーション。我々のたどたどしい英語の説明を、いつも我慢強く、そしてサポーティブに引き出してもらいます。

今回のハイライトは90歳の女性、脳梗塞による左不全麻痺、ADLは全介助が必要。右尿管結石嵌頓による閉塞性腎盂腎炎、敗血症性ショックにて右腎瘻造設によるドレナージ+抗生剤投与により救命した症例。

尿培養:ESBL、Klebsiella pneumoniae
血液培養:Actinobaculum schaalii、Actinomyces europaeus
初期治療として、MRSA、緑膿菌などを想定しバンコマイシンなど投与、細菌培養同定後、抗生剤はPCGへ。感染症内科による的確な抗生剤選択と総合内科によるプロブレム抽出とその全身管理。泌尿器科で腎瘻造設によるドレナージが、高齢かつリスクの高い症例を救命できた。

その後の右尿管の20mm大の嵌頓結石に対し、TULが試みられたが、尿管完全閉鎖のため、アクセス困難にて結石砕石摘出は断念。

今後の排尿管理として、(1)腎瘻、(2)膀胱瘻の2つのドレナージチューブが体外に繋がれることになる。可能な限りチューブフリーをめざしたい。

Dr.Moodyより腎瘻管理のリスクとベネフィットについてQuestion

腎瘻のリスク:自然抜去やカテーテルキンキングによるドレナージ不良、体動への影響、定期的なカテーテル交換が必要など
ベネフィット:継続的なドレナージが可能

永久的な腎瘻と膀胱瘻の管理は、90歳で併存疾患を考えるとドレナージチューブの自己管理は難しい。 今回は家族にも喜ばれ、亀田のチーム医療が功を奏したわけだが、『治療』という大義名分の元、侵襲的な治療を行う事が必ずしもその方に幸せなことかを問われる場合が増えてきている。癌でなくても『緩和ケア』の積極的な介入が必要なのではないか。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術