2016年5月8日「AUA2016 in San Diego」にて太田医師が発表!

医師になると日常診療以外にも学会発表や論文作成など多くの仕事があります。学会も国内外で盛んに行われています。多くの学会、特に国内学会は演題(abstract)を提出すれば発表の機会が与えられますが、海外のメジャーな学会では必ずしもそうではありません。泌尿器科の領域ではアメリカ泌尿器科学会(AUA)、欧州泌尿器科学会(EAU)が2大メジャー学会で、世界中の泌尿器科医が集まります。abstractの採択率(accept)も20%台とも言われており、なかなか厳しいのです。

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昨年の秋にAUAとEAUのそれぞれ別の内容のabstractを提出したところ、残念ながらEAUは採択されませんでしたが、AUAでacceptされました。AUA2016は5月にSan Diegoにて開催され、Moderate Posterという形式で発表してきました。
学会前にはPosterやSlideの作成、発表の原稿の準備をしなければなりませんが、英語がネイティブでない日本人には難しいことが沢山あります。しかし、当院にはアメリカ人医師が丁寧に指導してくれるという願ってもない環境があります(やりとりはすべて英語ですが、、、)。発表原稿の文言だけでなく発音のチェックまでしてくださり、さらにお手本をVoice recorderにまで録音してくれるという肌理の細かな指導にたいへん助けられました。Dr. Moodyに感謝!!

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今回の発表のタイトルは、「悪性腫瘍・後腹膜線維症患者において側孔なし尿管ステントはステント不全を減らす」です。この研究は、癌研有明病院と関東中央病院との共同研究です。
悪性腫瘍・後腹膜線維症患者に尿管の通過障害が起こり水腎症や腎後性腎不全、腎盂腎炎などが起こった場合に尿管ステントを挿入することがありますが、高頻度でステントが機能しない(ステント不全)ことが問題となっています。ステント不全になるとステントを交換するか腎瘻という背中から管を直接腎臓に挿入する方法に切り替えなければなりません。
通常、尿管ステントとは直線的なシャフト部分とその両端のコイル状の部分から構成されています。シャフト部分には通常、小さな孔があいています(側孔)。90年代より日本ではこの側孔のないステントが使用され始め、年々使用頻度が増えてきています。その理由は、ステント不全が起こりにくいと多くの日本の泌尿器科医が実感しているからなのですが、残念なことにきちんと調べられて来ませんでした。しかもこの側孔のないステントは日本でしか販売されてこなかったため、海外の論文にも取り上げられていません。そこで、この側孔のないステントがどれだけステント不全が少ないのか、後ろ向きに検討した結果を発表したのです。結果は統計学的に有意さをもって側孔のないステントを使用した方がステント不全が少なかったのです。

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学会では、1日の最終のセッションにもかかわらず、多くの世界中の泌尿器科医より質問をいただきました。慣れない英語ですが身振り手振りで説明するのも楽しいものです。現在、Dr. Moodyに英語の指導を受けながら、さらには統計の専門家である星野先生にも相談しながら側孔なし尿管ステントのメリットについて論文を作成中です。

(太田智則)


太田 智則

亀田総合病院 泌尿器科 顧問
太田 智則

このサイトの監修者

亀田総合病院
泌尿器科部長 安倍 弘和

【専門分野】
泌尿器疾患一般 腹腔鏡下手術