Journal club(17.1/28)

(※このコンテンツには作成者の個人的意見も含まれております。臨床への応用は御自身の判断及び責任に基づき行ってください)

今週のJournal clubはこちらの論文

The Use of Vancomycin Powder in Modern Spine Surgery:
Systematic Review and Meta-Analysis of the Clinical Evidence
World Neurosurgery.(2015)83. 5:816-823

SSI予防目的にバンコマイシン局所投与を行う妥当性に関する論文。概要は

Patient; Pubmedで検索しinclusion criteriaに合致した18論文
Exposure;閉創時のバンコマイシンパウダー散布
Comparison;設定なし
Outcome; 深部及び表層の感染率
Type of design; systematic review

脊椎脊髄の手術において感染は切っても切れないものであり、細心の注意を払ったとしても一定の確率で起こりうる。特に固定術などの異物挿入、外傷によるスキンバリアの破綻などでは感染のリスクとしては高率である。閉創時にバンコマイシンパウダーを局所投与することにより術後感染を防ぐことができるかについていくつかの文献にまとめたものである。結論としては、表層感染は少し減りそう、深部感染症はかなり減らせそう、外傷、胸腰椎後方固定術は良い適応そう、副作用は大きなものは起こらなかったとのこと。

-批判的吟味とコメント-

New knowledgeか?→特別な薬剤ではないが、局所投与による感染予防に関してはそれほど文献は出ていない
Selection bias→systematic reviewでありある程度は仕方ないが、脊椎全て、前方後方、リスク因子全て込みでの評価となっている
Information bias→感染の定義が曖昧。外科医が感染とみなしたものなのか、発熱の有無や採血データなど客観的評価が必要なのかについて記載なし
交絡因子→他の要素、例えば人的プロセスによる感染や術前のスキンコロニゼーションは交絡の要素となり得る
外的妥当性→妥当性あり

一度感染を起こすと患者さんにとっても、医療経済としても多大な損害があることを考えると、しっかりとリスクの層別化を行い適切な症例に適切な投与を行うことは意味があると思われる。当科でもここ1,2年でリスクある症例に限り投与を開始している。またいずれ発表の予定である。

このサイトの監修者

亀田総合病院
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫

【専門分野】
脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患の外科治療