ちょっとためになる話32:痙性麻痺(けいせいまひ)・痙縮(けいしゅく)の治療(痙縮2)

痙縮は脳梗塞や脳出血後にみられることが頻度としては多いと思いますが、脊髄損傷や脊髄の血管障害、脊髄小脳変性症の様な変性疾患や脳性麻痺など様々な脳・脊髄の障害で起こることがあります。

異常に筋肉の緊張度(力の入る程度)が高まる状態、つまり痙性が強まった状態では運動のスムーズさが損なわれ、関節が異常な姿勢で固まってしまったり、意図しない体の動きが見られたり、さらには筋肉に力が入りすぎて攣った様に痛みを伴ってくることもあります。

関節の可動範囲が小さくなってしまったり、関節が固まってしまったりすると、着替えが難しくなったり、車いすにうまく座れなくなってしまったりすることもあります。そうなる前に何かしらの治療介入を行うことが望ましいと考えています。

まずは関節の可動域を保つためのストレッチ・リハビリテーションを行っていくことが基本であり、最も重要です。その他には、症状の程度によって様々な治療法を患者さんと相談しながら試みていくのが実際のところだと思います。

例えば、症状が軽い場合にはバクロフェンという薬剤の飲み薬(商品名:ギャバロン、リオレサール)を試したり、症状が重い場合にはバクロフェンを直接脊髄腔内に注射する治療を選択したりする場合もあります。局所的な痙縮であればボツリヌス療法(局所注射)も選択肢の一つですし、およそ6歳までのお子さんの脳性麻痺・痙性対麻痺では足の痙縮(突っ張り)に対して選択的脊髄後根遮断術という手術の選択肢もあります。さらに重度で、関節が曲がったまま固まってしまっているような場合には腱延長術というような手術で関節の可動域を広げる方法もあります。

原因となっている疾患と症状の程度は人それぞれであり、望ましい治療法/望ましくない治療法というのは専門的な判断を要することがありますので、その方の病状や治療に対する考え方、治療目標などをご本人・ご家族と主治医の間でよく相談しながら治療を進めていくことが大切だと思います。

このサイトの監修者

亀田総合病院
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫

【専門分野】
脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患の外科治療