ちょっとためになる話33:バクロフェン持続髄注療法(ITB療法)とは?(痙縮3)

何らかの脳障害や脊髄障害により、精緻なコントロールが効きにくくなった筋肉が自分の意図と関係なく過剰に緊張状態となってしまう痙縮に対して、その筋緊張状態を緩めるための治療法の一つがバクロフェン持続髄注療法です。バクロフェンを脊髄の周りにあるクモ膜下腔内に投与すると、バクロフェンは脊髄の後角で神経活動に対して抑制的に働くGABAB受容体と結合します。それにより、過剰な筋肉への収縮指令が是正されるというのが、バクロフェン髄注療法の大まかな作用機序と考えられています。

バクロフェンを持続的にクモ膜下腔内に投与していくためには、専用のポンプとカテーテルを体内に留置する必要があります。また、バクロフェン持続髄注療法を継続していくためにはポンプ内に薬液を定期的に補充していく必要があるため、定期的な外来受診が必要です。

「いきなり体に器械を埋め込むのは嫌だ!」と考える方が多いと思います。バクロフェン持続髄注療法の導入を検討する際には、いきなり器械を体に埋め込むのではなく、その前に必ずバクロフェンが症状の改善に効果があるのかを確かめるトライアルを行います。トライアルでは皮膚に局所麻酔をして、バクロフェンをクモ膜下腔内へ注射投与します。そして、バクロフェンの効果がご自身の満足するものであったならば、そこで改めてバクロフェン髄注療法を実際に導入するか主治医と相談して決めていきます。

痙縮でお困りの方、「これって痙縮なの?」という疑問をお持ちの方、バクロフェン髄注療法について詳しく知りたい方は、是非専門の先生に相談されてみてはいかがでしょうか。バクロフェン髄注療法に関する情報はインターネットでも見ることができます。以下のホームページでも、痙縮とバクロフェン髄注療法についてのご理解が深められるものと思います。

バクロフェン髄注療法(ITB療法)について  https://www.itb-dsc.info/

このサイトの監修者

亀田総合病院
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫

【専門分野】
脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患の外科治療