ちょっとためになる話31:痙性麻痺(けいせいまひ)・痙縮(けいしゅく)って何だろう?(痙縮1)

体の動きは神経系の中枢である脳から脊髄を介した運動の指令と、筋肉や関節などの末梢の運動器からの感覚の情報を複雑に統合して調整されて、私たちが思ったように(あるいは何も考えなくてもある程度自動的に)スムーズに動くような仕組みになっています。その時に筋肉は適切な緊張度(力の入るの程度)を保っています。

脳から体へ出る運動の指令と、皮膚・筋肉・関節などから脳に戻る感覚刺激のやりとりがうまくできないと筋肉の緊張度が高まり、体がこわばったり突っ張ったりしてしまうことがあり、そのような状態を痙性が高まった状態、痙性麻痺や痙縮と呼んでいます。体の痙性が高まると手がこわばって動きにくい、足が突っ張ってしまう、こわばって痛くなる、階段が降りにくい、体幹が反り返ってしまうなど様々な症状が起こります。

痙性麻痺・痙縮は脳卒中(脳梗塞や脳出血)や脊髄損傷の後にみられることが多いですが、頚椎症(脊髄症)、脊髄血管障害、多発性硬化症、脳性麻痺や脊髄小脳変性症など様々な脳や脊髄の疾患でみられます。また、患者さんによって様々な程度でみられます。

足の運動麻痺があるときに、筋肉の緊張度が高いおかげで(ふにゃふにゃ曲がってしまうことが無いので)不自由ではあるものの足が突っ張って体重を支えられるから少し移動できるという様に痙性が高い状態は神経障害がある方の日常生活上では有益な場合もあります。

しかし、体がこわばったり突っ張ったりして寝られない、衣服が着替えにくい、車いすに座っていられない(足が突っ張ったり、背中が反って滑り落ちそうになったり)、こわばった部位に痛みがあるなどの場合には何らかの治療を試みても良いかもしれません。

痙性が必要以上に高いことにより長いことこわばったり突っ張ったりして姿勢や角度が固まったままの関節は、たとえ痙縮が治療によって改善しても筋肉や腱が短くなってしまっているため、結局動かしにくいままの状態になってしまいます。そうなる前に早めに何かしらの介入をしたほうが良いと考えています。

このサイトの監修者

亀田総合病院
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫

【専門分野】
脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患の外科治療