足根管症候群

1.足根管症候群について

 脛骨神経(けいこつしんけい)は、足関節の内果(ないか:足首の内側の飛び出た所で、いわゆる「くるぶし」)の後ろにあり、足根管の中に存在しております。足根管は骨性の壁(内果と踵骨と距骨)と屈筋支帯(くっきんしたい)によって囲まれた管のことです。
 足根管症候群とは、何らかの原因で足根管の内圧が高くなり、足根管内に存在する脛骨神経が圧迫されて、痛みやしびれを引き起こす疾患です。原因としては、外傷後(足首の捻挫、果部骨折、踵骨骨折など)や足首の変形、ガングリオン、静脈瘤、動脈硬化した動脈などの圧迫によって起こる事もありますが、全く原因が特定できない症例もみられます。
 症状は足底部の痛みやしびれです。これらの症状は圧迫をうけた神経領域へ放散する痛みや異常知覚(ピリピリする、ジンジンする感覚)として訴えられます。しびれについては、よく「砂利の上を歩いているよう」とも訴えられます。又、しばしば、痛みは夜間痛や運動時痛として認められます。診察では足根管部の圧痛やTinel徴候(圧迫された脛骨神経を軽く叩くと、足底や足先へ痛みが放散します)が陽性か、足底部や足趾の知覚障害はないか、を診ます。レントゲン検査では特徴的な異常所見はありません。診断は圧痛部へ局所麻酔を打って、痛みなどの自覚症状が軽快すればほぼ確定します。
 治療は保存的治療(手術しない方法)が原則です。まず、日常生活動作の注意点を指導し、薬物療法としては非ステロイド系抗炎症剤やビタミンB製剤を処方します。
 しかし、これらの保存的治療に抵抗する症例や原因が腫瘍(ガングリオンなど)や足首の変形などであれば手術的治療を検討します。手術は屈筋支帯の切離を行い、原因となっている組織を取り除き、脛骨神経の減圧と剥離を行います。

2.足根管開放術について

 局所麻酔でお話をしながら約60分の手術です。切開は内くるぶしの後ろに約5cm行います。屈筋支帯の切開を行い、直下の動脈と脛骨神経の剥離を行います。必要ならば動脈と神経の間に人工膜をはさみ分離を行います。前日または当日入院にて手術室で行います。傷は細い糸で縫合します。
 経過に問題なければ手術翌日に退院となります。起立・歩行は術直後から可能ですが、術後の血腫形成を防ぐため第1日目は術後数時間圧迫包帯をして過ごし、圧迫解除後も局所安静を続けるようにします。術翌日からは癒着予防のため、起立・歩行の動作を再開します。手術4日目より傷は水道水やシャワー、お風呂で濡らしてかまいません。
 手術の効果についてはしびれの完治はなかなか得られないようです。しびれ感の軽減が目的になります。

◎ちょっとためになる話◎

ちょっとためになる脊椎脊髄と末梢神経の話3:足根管症候群について

このサイトの監修者

亀田総合病院
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫

【専門分野】
脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患の外科治療