第90回日本感染症学会総会・学術講演会で 主任部長 青島正大と山脇が発表! その1

平成28年4月15日(金曜日)・4月16日(土曜日)に仙台国際センターで開催された第90回日本感染症学会総会・学術講演会で、当科青島正大主任部長と山脇聡が発表しました。

本稿はその1として、主任部長 青島の発表を報告します。

青島は、「23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV23)の初回接種を行った呼吸器疾患入院例の接種前後の感染発症の後方視的観察研究」という演題を発表し、次の内容を述べました。

「本研究は、調査期間は2011年4月〜2015年3月の間、当科入院中にPPV23を初回接種した例を対象とし、基礎疾患、接種前後での全ての原因による肺炎および肺炎球菌肺炎の発症状況を後方視的に集計し、ワクチンの予防効果を検討した。該当例は131例(男性102、女性29)、年齢平均値は69.6歳。基礎疾患は呼吸器悪性腫瘍が55例、間質性肺炎30例、COPD 21例、肺の基礎疾患を有さない肺炎18例、ほか7例であった。肺炎球菌肺炎は1000人・日当たりでは接種前0.196エピソード、接種後0.057(p=0.025)。ワクチンの予防効果は全原因による肺炎に対して38.9%、肺炎球菌肺炎に対して70.0%と試算された。サブ解析では免疫抑制状況にないCOPDや肺に基礎疾患を有さない例では、全原因による肺炎が有意に減少し、接種後には肺炎球菌肺炎の発症はなく、より免疫抑制状態にあったと考えられる肺癌や間質性肺炎においても肺炎発症は有意には増加しなかった。この研究デザインでは肺癌や間質性肺炎患者は接種前に比べ接種後は肺炎発症に関しより不利な状況にあると想定されるが、疾患経過早期のPPV23接種はある程度の効果を示したと考えられた。」

会場からは、「免疫抑制状態の肺癌化学療法患者ではPPV23を接種しても免疫が得られないために、前後での肺炎発症に差がなかったと考えているか」という質問があり、青島は、「当科で行った肺癌化学療法中の患者におけるインフルエンザワクチンの前向き研究では、抗体の反応は非癌患者と比較し同等であったが、プラチナダブレットのみ抗体の反応が低かったことから考えると、PPV23に関しても抗体の反応は得られているとは考えられ、免疫抑制状態で肺炎には不利な状況になっていても肺炎発症には差はなかったと考えられる。今後はこれらの患者では初回接種はPCV13を、その後PPV23の追加接種も考えていきたい。」と返答しました。


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このサイトの監修者

亀田総合病院
呼吸器内科部長 中島 啓

【専門分野】
呼吸器疾患